弦楽器の弦の太さと長さと張力の関係を整理する

ギターでもエレキベースでもウッドベースでもあんまり弦選びにこだわったことは無いのですが、毎回このことを考えると頭が混乱するので、とりあえずまとめておきました。
以下全て、ピッチは一定という条件で整理します。

長さが固定の場合

ここで言う長さとは、ナットからブリッジまでの長さですね。要するに振動する部分の長さです。アコギのようにこの長さが変えづらい(ブリッジが移動しづらい)楽器は、弦の太さで張力調整をしてプレイアビリティを調整することになる、ということですかね。

  • 弦が太いと張力は強くなる
  • 弦が細いと張力は弱くなる

隣合う弦を同じ音程にチューニングにしたら、細い弦の方がテンションがダルダルになるので、こういうことかと。つまり、弦のテンションを下げたければ、細い弦に交換すればよい、となります。

弦の太さが固定の場合

ウッドベースみたいに弦が高価なのでおいそれと変更できない場合、弦じゃなくて楽器本体の方を調整してプレイアビリティを調整する、という方針になります。駒の位置を変更するのはあんまりおすすめできませんが。
あと、エレキベースのように、楽器によってスケールが異なるものの比較としても。

  • 弦が長いと張力は強くなる
  • 弦が短いと張力は弱くなる

どれかの弦のチューニングを1オクターブ下げて12フレットを抑えることで擬似的に「弦長が半分の楽器」という状況を作れます。やっぱり弦がダルダルになるので、こういうことになるかと。ということで、弦のテンションを下げるには、弦長を短くすればよいということになります。

補足。ウッドベースの弦の押弦(左手)

物理的にはウッドベースに限らないのですが、一口に弦の張力といっても「左手が押弦するテンション」と、「右手で弦を弾く時のテンション」は意味が異なります。いや正確に言うと、テンションは一緒なのですが、左手の場合、弦をどれくらいの長さ押さえこむかによって、最終的に必要となる力が変わってきます。

strings_001

駒の位置を調整して弦のテンションを下げたとしても、同時に弦と指板の距離が長くなってしまいますので、左手が押弦する力は強くなるという成分が働きます。
つまりトータルで見て左手の押弦力を調整するには、「弦が短くなったことで弱まるテンション」と「指板からの距離が遠くなることで必要となる力」のバランスを見る、という必要が発生します。

ということで、駒のアジャスターで高低を調整して、

strings_002

てな風に弦と指板の距離を近づけるということをやれば、いちおう必要となる押弦力は弱まります。

で終われば話はまだシンプルなのですが、もう一つ、プレイアビリティを左右するのに無視できない要員があります。
それは右手の位置です。

弦長を短くする(駒の位置をサドル方向にズラす)ことで、物理的に右手の位置が駒寄りになります。これが右手のテンションを高める要員として寄与してしまいます。
そこら辺の話は以前に記事にしました。
[ウッドベース・コントラバス] 駒の高さを替えずに弦のテンションを緩める方法

要するに、駒の位置調整は、左手と右手のプレイアビリティという意味でコンフリクトしてしまうのです。

そこらへんも整理しようと思いましたが、もう頭が痛くなってきたのでやめておきます。ああ、ややこしい…。

補足。物理方程式より求める

まぁ本当は弦の張力とか太さ(=密度)とかの関係は、物理方程式から簡単に出そうと思えば出せますわな。こういう覚え方だと実感が伴わないので補足扱いとさせて頂いています。

弦の固有振動数は以下のように求められるそうです。

sstrings_003

fnはピッチの高さ
lは弦長
Sは張力
ρは弦の太さ(本当は線密度)

弦のピッチは変更しませんので、fnは固定とした場合、

l(弦長)が固定の場合

  • ρ(太さ)が大きいとS(張力)は大きくなる
  • ρ(太さ)が小さいとS(張力)は小さくなる

ρ(太さ)が固定の場合

  • l(弦長)が大きいとSは大きくなる
  • l(弦長)が小さいとSは小さくなる

という、最初に述べたことと同じ結果が得られました。

死ぬほど物理を解きまくってた受験生時代を思い出しました。

方程式を使うと、上がった下がっただけでじゃなく、それぞれの影響具合まで調べられるはずです。式だけ見てると、「S(張力)の変化には、l(弦長)の方が、ρ(太さ)よりも寄与する」ということが分かります。
このあたりの細かい検証は、気が向いたらやりますかね。

参考:

弦の振動 ■わかりやすい高校物理の部屋■