ノリで始めた「想定読者が俺だけの、書いて覚える音楽理論」の連載がついに6回目になってしまいました。予想外に継続しているので記事ごとのアイキャッチ画像がネタ切れしてきています。
今回はノンダイアトニックコードの分析について。ちょっとずつジャズスタンダードのコードアナライズのための知識が揃ってきているはずです。今回は以下の4点について復習をします。
- セカンダリードミナント
- 裏コード
- 代理コード
- ディミニッシュコードの分類
1. セカンダリードミナント (と、リレイテッドツーマイナーセブンス)
スタンダードでは曲本来のキーでなくても II-V-I と見なせる進行がやたら出てくるので、それらをさくっと分析するための知識であるように思われます。
セカンダリードミナント / Secondary dominant
曲中の I 以外のコードに対する V7 の事。
瞬間転調と考えられなくも無いが、元のキーのままこう解釈するようです。私の予想ですが、アナライズの際に転調が多いとややこしいので転調せずにノンダイアトニックコードを解釈するための理論なのではないでしょうか。
用語として”サブドミナント”と混合しやすいので注意です。俺だけかもしれんけど。
リレイテッドツーマイナーセブンス / Related IIm7
上記のセカンダリードミナントに対する IIm7 のこと。
この2つを組み合わせる事で、転調という解釈をしなくてもに擬似的に IIm7-V7-I△7 というケーデンスを捉える事ができるようになります。
曲中で、V7でない□7コードが出てきたら、前後を確認してこの組み合わせになっていないか確認すると良い気がします。
2. 裏コード
本来は代理コードのうちの一部なのでしょうが、覚えやすいしわざわざ別の名前が付いてるので切り出して紹介します。
ドミナントセブンス V7 と同じトライトーンを持つセブンスコード ♭II7 は機能的にかなり近く、V7の代理機能を持ちます。特別にこのコードは裏コードと呼ばれます。
ルート音自体もトライトーンの関係にあるのが数学的でおもしろいですね。
IIm7 – V7 – I△7 進行は4種類ある
上記の「リレイテッドIIm7」と「裏コード」の理論を元に、IIm7 – V7 – I△7 は同一キー内で4種のパターンをとる事ができます。ノンダイアトニックコードが出てきても、すぐこれが見抜けたら随分とアナライズがしやすくなる気がします。特に♭VIm7はサブドミナントとして使えるという知識は結構大事ではないかと。
上記の図において、本来の II – V – I 進行のようにルートが5度進行するものを実線、そうでないものは破線で示します。納浩一さんの著書でそうなっていたからですが、これが世界共通の表記方なのかは存じ上げません。
3. 代理コード
響きが似ているコードは機能が類似していると見なし、互いに代理できる、というものです。
記事の本題からずれてしまいますが、ここで復習がてらダイアトニックコードにおける代理コードを見ておきます。
メジャーキーにおけるダイアトニックコードと機能は以下の通り。
機能 | 主コード | 代理コード |
---|---|---|
トニック | I△7 | IIIm7, VIm7 |
サブドミナント | IV△7 | IIm7, (VIm7) |
ドミナント | V7 | VIIm7-5 |
マイナーキーだとこう。ナチュラルマイナースケールにおけるダイアトニックコードです。
機能 | 主コード | 代理コード |
---|---|---|
トニックマイナー | Im7 | ♭III△7, (♭VIm7) |
サブドミナントマイナー | IVm7 | IIm7-5, ♭VI△7, ♭VII7 |
ドミナントマイナー | Vm7 | (♭VII7) |
( )で囲われているコードは文献によっては代理コードでは無いという扱いになっています。
機能ごとの代表的な代理コード
理屈はおいといて結論だけを書いておきます。恐らくまるっと覚えておくべきものでしょう。
トニック
ドミナント
数が少なくて覚えやすくていいですね。
サブドミナント
サブドミナントは何だかたくさん代理コードがあります。曖昧な奴だから代理も多いんだと覚えることにします。
VII7は元のサブドミナントと1音しか共通していないのに何で代理コードになっているかは存じ上げません。誰か教えて下さい。
4. ディミニッシュコードの分類
ディミニッシュは以下の3パターンで解釈すればいいようです。
役割 | 説明 | コード例 |
---|---|---|
ドミナントの代理 | V7(♭9)の展開系 | VIIdim7 |
トニックディミニッシュ | I△7 や I6 の代わりに変化球として用いる | Idim7 |
パッシングディミニッシュ | ルート音をスムーズに繋げるために使う | 上記以外 |
補足:ドミナントの代理コードとしての構成音
- VIIdim7 : VII, II, IV, ♭VI
- V7(♭9) : V, VII, II, IV, ♭VI
ということで、V7(♭9) からルート音を抜いたら VIIdim7 と同じコードになります。
参考文献
あと、昔買った事を最近思い出した納浩一の著書 “ジャズ・スタンダート・セオリー” (リットーミュージック, 2015) も大いに参考に致しました。
「♭VIm7はドミナントとして使える」と書いてありますが、サブドミナントの間違いではありませんか?
匿名さん、仰るとおりでした…。修正しました。
コメントありがとうございました!
まとめかたが実践的でわかりやすく大変参考になりました。ありがとうございます!