恥をさらす音楽理論シリーズその4です。今回はいよいよスケールに参ります。
巻末の参考文献でも紹介差し上げております”Jazz Piano Practice ジャズピアノの練習”というサイトでの紹介に則り、優先順に従いスケールを覚えることにします。そのサイトではこのように紹介されていました。
優先度 | スケール | 私の学習状況 |
---|---|---|
Step1 | メジャースケール | 習得済み |
メロディックマイナースケール | その3で紹介 | |
Step2 | ドリアン | 習得済み |
ミクソリディアン | 習得済み | |
ロクリアン#2 | まだ | |
ハーモニックマイナーパーフェクト5thビロウ | まだ | |
オルタード | まだ | |
Step3 | ディミニッシュ | まだ |
ブルーノート | まだ | |
リディアン7th | まだ | |
ペンタトニック | まだ | |
ホールトーン | まだ | |
フリジアン | 習得済み | |
リディアン | 習得済み |
Step1と2は必須、Step3はスタイルに応じて、というニュアンスで紹介されています。
今回はStep2のうち未習得の3つ、「ロクリアン#2スケール」「ハーモニックマイナーパーフェクト5thビロウスケール」「オルタードスケール」を紹介します。いずれもII – V – I のケーデンスで利用されるものです。
Step3は次の記事で紹介します。
1. ロクリアン#2スケール
名前が表す通り、ロクリアンの2ndが#したものです。
一方で、個人的には馴染みの深いナチュラルマイナースケールから5thが♭したものと解釈した方が覚えやすそうな気がします。が、そうしちゃうと機能を取り違える可能性がありますので、よろしくないかもしれません。
ちなみに似たような議論が海外のフォーラムにありました。
terminology – Why Locrian #2? – Music: Practice & Theory Stack Exchange
さらに言うと、オルタードドリアンという呼び方も可能なようです。
ドリアン(3rdと7thが♭)に対し、さらに5thと6thを♭するとこれと同じスケールになるからだそうです。ただ頭が混乱するので無視することにします。
さらにさらに言うと、この構成音はメロディックマイナースケールの第6音から派生したスーパーエオリアンと同じらしいです。
これも一旦は無視しておきます。
正しい、というかコンテキストを踏まえた理解としては、ただのロクリアンは♭2がアヴォイドノートなので、「じゃあナチュラル2ndにしたらテンション9thが使えるじゃん」という発想で生み出されたスケールのようです。ここだけ見るとなんでもありやんと思わないでもないですが、やはりロクリアンの文脈で、ロクリアン#2と覚えるのがまっとうな気がします。
ベース指板での位置取り
そのまま図にするとややこしすぎてあまり意味を感じづらい絵になってしまったので、テンションノートは黄色にしました。ただ私がテンションかどうかを瞬時に把握しながらアドリブフレージングするスキルがまだ無いため、現時点ではただ彩色が豊かになった効果しかありません。
というかこういう指板図を図として暗記することはあんまり音楽的ではないので、やはりルート音を基点に3rd、5th、6th、7thが♭しているという覚え方がちゃんとしている気がします。
どんな時に使うの?
マイナーキーにおけるケーデンス、IIm7(♭5) – V7 – Im 進行における、IIm7(♭5) = IIΦ (ハーフディミニッシュ)において使われるとのこと。II – V – I で使われるということは相当な頻出スケールだと思われます。Step2(必須教養)として位置付けられるのも納得です。
こういう理解でOKなんでしょうか。
- マイナースケールのうち、ナチュラルマイナーとハーモニックマイナーの2種においてはダイアトニックコードのIIはIIm7(♭5)になる
- そしてナチュラルマイナースケールで言うII音は、メジャースケールを基点とした時にVII音に該当する
- そのため、チャーチモードの第7音派生のロクリアンが使われる
- ただしロクリアンのアヴォイドノート♭2を防ぐために2ndをナチュラルにした = ロクリアン#2スケール
自信はありません。
ロクリアンとのII音バッティングに注意
IIΦには派生元のロクリアンも使えてしまうため、ソロイストがロクリアンでフレージングしている裏で、例えばピアニストがロクリアン#2でバッキングやっちゃうと、II音が♭とナチュラルでぶつかってしまう現象が起こるようです。耳がいい人は瞬時に合わせるんでしょうが、私にはまだ無理な領域です。
確かに手元のギターで弾いてみると、ロクリアン#2におけるナチュラルIIってかなり特殊な響きがします。この音がロクリアンに比べてより現代的なサウンドを特徴づけているようなのですが、私には使いこなすにはまだ時間が必要そうです。
2. ハーモニックマイナーパーフェクト5thビロウスケール
この名前の中二感を前に、誰しもが一度はネタにしたことがあるでしょう。大学時代の私もそうでした。略して「HMP5↓」。
ハーモニックマイナースケールを完全5度下から開始した構成音を持つことが名前の由来のようです。が、参考文献に依るとこの覚え方は望ましくないらしいです。理由はハーモニックマイナーを覚える理由がほぼ無いから。ということで次の覚え方。
ミクソリディアンの2ndと6thの2つを♭させたスケールと覚えるのがいいようです。
確かに、後述するようにこのスケールの使い所が「ドミナント7th」なので、ミクソリディアンを基点に覚えた方がファンクション目線としてもしっくりきます。
アヴァイドノートが存在します。
アヴァイドノートについては今回はあまり触れませんが(というかまだ良くわかっていない)、イオニアンのアヴォイドがIV音というのは覚えているので、それと同じかぁくらいに考えておきます。今は。
なお厳密にはアヴォイドノートは、キーやファンクション(トニックとか)の文脈に応じて回避されるべきorされなくてもいいが決まるようで、これを一概に「何がなんでもIVは使わない」と覚えてしまうと良くないようです。
ベース指板での位置取り
図にすると分かりやすいですが、♭IIとナチュラルIIIの間に増2度(aug2)音程があります。それが嫌でメロディックマイナースケール作ったんちゃうんかいと思わないでもないですが、まぁこういうもんなんでしょう。
この増2度音程がこのスケールのサウンドを特徴づけているのは間違いないと思います。とある解説ブログではこれらの音を強調すると「やたらクサい」と書かれていましたが、私もそう思います。
どんな時に使うの?
マイナーキーにおけるドミナント7thコード。
上で紹介したロクリアン#2と同様で、II-V-Iケーデンスで使われるということでかなり頻度が高いのではと想像されます。
というか、このスケールはこれ以外の用途で使われることはほぼ無いとのことです。
3. オルタードスケール
ひと目見て「何かやばいのが来たなぁ…」と思いました。2ndが2個あるし、5thの音は無くなりました。
ご存知の通り楽譜表現において一つの音価に#と♭の両方を使うのは嫌われるるものですが、このスケールはこう書く以外に方法がないからしょうがないのだそうです。
ベース指板での位置取り
トライトーンが2種類もあったり、III♭とIIIナチュラルの両方があってメジャーなのかマイナーなのかもよく分かりません。カオスです。
一応簡単な覚え方があって、ルートの半音上からメロディックマイナーを弾くと全く同じ構成音になります。
本質的な話じゃない気もしますが、覚えたての人間が四の五の言える状況ではないので指が覚えるまではその考え方を利用させてもらおうと思います。
どんな時に使うの?
ドミナント7thでしか使えないそうです。
何か尋常じゃない響きがするので、まぁ使える箇所は限定されてそうだというのは想像しやすいです。
マイナーとの相性が抜群らしいですが、メジャーで使ってもよいとのこと。
指が覚えるまで
かのジャズジャイアント達も「スケールは練習した」と口を揃えるように、条件反射で演奏できるまで指になじませるしか無い世界です。
今更スケールの復習をしている俺ですら、チャーチモードはスタジオ前の指ならしで弾いてたら覚えられたものなので、これから基礎練に取り入れていくことで指が覚えるまで待つことにします。
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