第1回で、ポールチェンバースがあまりに3rdからコードを始める弾きっぷりに驚愕したので、第2回をやります。今回の題材はジョンコルトレーンのBlue Trainから”Moment’s Notice”です。
まぁわざわざここに貼る必要も無いくらいの有名テイクです。
で、肝心のベースラインの採譜ですが、今回はズルをしました。
YouTubeというウルトラ便利なものを活用します。
このテイクのベースラインのトランスクリプションをわざわざアップしている至極親切な人がいるので、その労力にあやかることにします。というか実を言うと、この動画を見つけたのでMoment’s Noticeを第2回の題材にしたというのが真相です。ありがとうございますPatrick Nabuursさん。
この記事の趣旨は耳コピすることではなく分析することですので、これでよしとします。よしとしてください。
コード1音目にどの音が選ばれているか
1コーラスあたりコード49回。これが3コーラスで合計147回。なおコーラス最後の、E♭6/9から始まる8小説のブリッジ箇所は集計対象から省いています。
ということで集計しました。
音価 | 回数 | 発生率 |
---|---|---|
1st | 79回 | 53.7% |
2nd | 1回 | 0.7% |
3rd | 29回 | 19.7% |
4th | 1回 | 0.7% |
5th | 28回 | 19.0% |
6th | 0回 | 0% |
7th | 9回 | 6.1% |
合計 | 147回 | 100.0% |
相変わらずの3rdの多さです。やっぱり5thより多いのか。
第1回のLotus Blossomとだいたい似たような配分となりました。これはもう狙ってやってると思ってよさそうです。こんな早い曲で、しかも2拍づつコードが変わる目まぐるしさでいちいちルート音意外を狙えるだなんてプロはすごいなぁ。感想が平凡すぎて泣ける。
ルート音以外の音が選ばれている箇所
例によって集計しました。各コードにおいてルート音じゃなかった回数を、3コーラス分集計したものです。
…相変わらず俺にとっては「だからなんだ」という風にしか見えないのですが。II-Vで出現率が高いのかなぁと思いつつ、そうでないII-Vもあり、よく分かりません。
とりあえず出現率が高いパターンを四角で囲っておきました。
7thが選ばれている箇所
第1回分析のLotus Blossomに比べると7thが選択率が高かったので、ふと7thだけ切り出してみました。
段が変わる直前のII-Vで多様されているということは分かります。
高い音が弾かれている箇所
やはりハイポジションの選択率が低いように思われましたので、前回と同様、各小節においてC3以上の音の選択数を集計してみました。今回は3コーラスなので各小節の最大数は4音×3コーラスの12音となります。
これも前回と同様、半数はゼロということで、だいたいハーフポジションと1stポジションでケリをつけているようです。
あと、各段の前半2小節は大人しく、後半2小節で盛り上がるという傾向はあるように思われます。図中のブルーの線で囲ったところです。
ここで「ポールチェンバースにはローポジションしか能が無いのか」という誤解を持ってはいけません。
マイルスのマラソンセッションで有名な”Relaxin’ With The Miles Davis Quintet”収録の”Oleo”では怒涛のハイポジションパッセージが聴かれます。あれはピアノとドラムが抜けて実質ソリストとのデュオになるという、ベーシストにとっては鬼のような展開をこな上でのフェージングだと思われます。
他にピアノとドラムというバッキングがあるからこそ、ローポジションを固めるというフレージングを選択しているのは間違いないと思われます。
第2回は以上です。第3回は?
2回集計をやってみて、ウォーキングベースラインのポールチェンバースの(少なくともコード1音目の)傾向はだいたい把握できた気がします。あくまで集計上の傾向ですが…。
あともう1回くらいポールチェンバースをピックアップしてみて、結論化してみましょうか。
その後は、ベーシストを変えてもう一度トライですかねぇ。サムジョーンズとか、パーシーヒースとかかな。
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