コロナの影響で自宅で特にやる事が無いので、久しぶりにウッドベースを弾きました。で、せっかくやるならと、中途半端に放ったらかしにしていた演奏フォームに焦点を当てて研究してみました。
かつて、敬愛するChristian McBrideやLarry Grenadierの演奏フォームを研究したのですが、
よく考えたら図体の違う人達をただ真似しても自分にとって同じコンディションにならないのではとようやく思いつき、今度はひたすら自分の演奏をビデオに撮ってはチェックする…という事を繰り返しました。
いろいろ気付きがありました。が、2ヵ月後くらいに忘れている気がしたので、ここで備忘録として残しておきます。
目指す姿
- ほどよく脱力し
- 左肘が横じゃなくて奥に向かって立ち
- 右腕がだらんとして手が指板の先にかかるくらいで
- それが見た目がかっこいい気がする
ウッドベース演奏フォームの改善において、己の体格を無視する事はできませんので、参考までに私の体形について書いておきます。
- 身長180cm、超痩せ型
- 腕がけっこう長い
この楽器をやるにあたって腕が長いのは結構難儀で、海外産ウッドベースの3/4サイズだと肩が閉じてしまいます。それによるプレイアビリティへの影響はよく分かりませんが、自分の演奏写真がなんかかっこ悪い事が長年のコンプレックスだったので、意識的に矯正を試みます。
さぁ参りましょう。
体に対するベースの角度を決める
左腕と右腕のバランスを取る要素として最重要だと思われます。
自分の体に対して垂直(90°)に近づけるほど、「左腕がネックに対して垂直に伸び」「右腕が窮屈になり」、ベースを体に対して水平にすれば逆の事、「左肘が外側に向いてしまい」「右腕に余裕が生まれ」ます。
私の場合、(つまらない答えですが)ベースの角度45°が左腕と右腕の開き具合がちょうどいいと感じます。肩幅のサイズや腕の長さに依って人それぞれな気はします。
私視点だと、ベースはこのように角度になります。
エンドピンの長さを決める
エンドピンの高さは、「右手が指板のどこにかかるか」に影響します。当たり前ですがエンドピンが高いほど指板の先(駒寄り)になりますし、エンドピンが低いほど指板中央に近づきます。
左がエンドピン高め、右がエンドピン低めの様子です。
エンドピンの高さで「右腕をだるんと脱力した状態で、右手の指が指板のどこにかかるか」を調整します。私は柔らかい音が好きなのと、弦のテンションが弱い方が好みなので、本当はできるだけ弦の中央に近い場所をピッチカートしたい = つまりエンドピンを下げたいのですが、あまりやりすぎるとベースが自分の体よりだいぶ低い位置に来てしまうので、体が丸まってしまいます。昔これでライブやったのですが、腰を少し痛めました。ので妥協します。
もう一点言うと、演奏フォームを模索するにあたりベース自体のコンディションがコロコロ変わってしまうと視点が定まりませんので、楽器本体に基準を作った方が研究しやすいという側面もあります。
結論として自分の場合は、溝が4つと決めました。ひとまず。
というか、10年以上ウッドベースを弾いてきてエンドピンの位置すらちゃんと決めてなかった私って何なんでしょうね。
体がベースによりかからない。逆。
久しぶりに弾いていて気付いたのですが、自分の体をベースに預けて弾くという癖がついているようでした。
本当は逆でベースが自分の体に寄りかかった上で安定している事が望ましいはずです。そうでないと左腕の機動力が確保できません。これは時間をかけて矯正する必要がありそうです。
体のどこでベースを支えるか
本当は憧れのChristian McBrideみたいに腹の肉で支えたかったのですが、あいにく私、超痩せ型の体型でして肉がありません。自分の場合は左の腰骨で支えるようにしています。
左足の膝をベースに添えるかどうかは迷っています。
もうちょっといろいろ試して答えを出そうと考えていますが、もしかしたら大した差は無いのかもしれません。
ベースを垂直に立てるか傾けるか
俺の中でのミスター垂直と言えばLarry Grenadierですが(写真左手)、ここまで垂直にするの、自分はダメでした。
まず楽器が安定しません。ぐらんぐらんします。そしてハイポジションが本当に弾きづらいです。この人なんでこんなポジションで弾けるのかさっぱり分かりません。スタンフォードの英文科卒業の天才なので私と見ている世界が違うのでしょう。
Christian McBride(右側)くらいに傾ける方が自分としてはしっくりきます。
体の重心をどこに置くか
両足で踏ん張る。と言いたいところですが、右足に重心を置いています。理由は、両足で踏ん張ると却って上半身がぐらんぐらんするからです。自分は超痩せ型なのでなおさら上半身の固定には気をつかいます。
左足はリズムキープのために足を踏み踏みするので、重心を置くのは右足、となります。
右手はマジで脱力していい
できる人は自然とやっているのでしょうが、私はゴリラなのでついゴシゴシ弾いてしまいます。昔はこの全力感がウッドベースの醍醐味なのであると思ってたところはありますが、歳をとり、今は意見が変わりました。
ゴシゴシ弾くと右指が反ります。これが本当にかっこよくない。今までごまんとウッドベース奏者を見てましたが、右指がこんな風になっている人を一度も見たことないので、よっぽどの悪癖なんでしょう。
いまだに気を抜いたらこうなっちゃうので、時間をかけて矯正する必要があります。気を抜くと力が入る、というのも変な話ですが…。
とにかく、そんなに力入れても音量変わらないよこの楽器、という事を気にすべきだと考えています。
指板に対して水平に指を振る
これは諸説あると思います。ボディに対して垂直方向に弦を振らした方が鳴りが良い、という意見もあります。
しかし私の場合はプレイアビリティを優先します。図のように指板に対して垂直に指を振る方が、単純に指がまわります。指を指板に向けて振ってしまうとピッキングした指が指板に当たってしまいますので、私の場合はそれを避けます。
血管が気持ち悪くてすみません。
当然ですが、アタックする弦によって指板の角度が異なるので、右指の振り抜く角度も変化します。G線であれば右肘が外側に開くはずです。ほっとくと肩が閉じてしまう人間のため、こういう癖をつけて自然に肩が開くようにするという意味でも都合がいいです。
第2関節で指を動かす
スイングジャズであれば、レイブラウンよろしく指の付け根(第3関節)で指を振り、指全体で弦をガンガン鳴らすのがよいでしょう。
レイブラウンの右指。なぜか小指も真っ直ぐ。
自分もDuke Ellingtonばかり演奏していた時の癖がいまだに抜けなく、これがデフォルトモードになっています。
ところがモダンジャズベーシストの右指に注目してみると、多くの、というかほとんどのベーシストが第2関節で指を動かしているのが分かります。当然ですがフレーズの対応力を広げるためでしょう。
指の形は必然的にこうなります。自分はこのムーブの経験が絶望的に足りてないため、当分はこれの癖をつけないとなぁというところです。
指の振りをとにかく速く
最後にもう一点。プロのベーシストと自分の演奏動画を見比べた時、あまりに違いすぎて愕然とするのがこれです。指振りのスピードが全然違う。これで超速フレーズを弾くのだーという意味では無く、例え曲がバラードだろうと、1音1音、指を振りはじめてから弦をピッキングするまでスピードが早い。
10年以上前な気がしますが、納さんが確かベースマガジンのインタビューで「リチャードボナのあのグルーブ感は、左手と右手のタイミングが神がかりに合っているから生み出されているのでは」という旨を仰っておりました。
タイミングと指のスピード、無関係な気はしません。
歯を食いしばらない
恥ずかしながら自分の演奏を動画に撮りまくる過程で気付きましたが、どうやら歯を食いしばっているようで、顔がひきつっています。
こんだけ筋力の要る楽器だからといって、何かに耐えるような表情で演奏するプロミュージシャンを見た事がありません。これも悪癖でしょう。
誰のチュートリアルを見ても口を揃えて「リラックスせよ」と仰る事とかなり関係があるように思われます。
この理不尽?なほどデカくて厄介な楽器、
如何に己の身体に負担や無理なく楽に演奏できるか?が最大の難問で、上達の入り口かと思います。
ぼくの場合、現在の楽器の構え方(伝統的に多分、10種類以上あるかと思います)は
所謂、イタリア式に近いスタイルかと思います。
楽器を体幹に対し45度で構えます。
基本的には腰骨の窪みに楽器の角を添わすのですが、加齢で腹回りが育てしまいその窪みが消滅してしまって無いため、腹?で、、、
楽器は、寝かし気味。
ナット/上駒が額、エレベ換算で1fが目の高さに成る位にエンドピンで高さを調整。
その状態でハーフポジションを構えた時に左手~ひじ、肩がネックと前からも横からも45度、肩からひじ、は床に水平となります。
ネックと頭の距離は拳✊一つ分に成る感じです。
これが所謂、ネックポジションの基本姿勢。
あっ、足は肩幅にひらいき上体ともにリラックスした休め(自然体)の姿勢
(楽器を持たずにリラックスしてたった状態。楽器に限らず身体を使う動作の全ての基本姿勢。)。
片足重心になると長時間の演奏はちょっとキツイ(膝や腰を傷めたり、、、)ため。
因みに、色々なスタイルもやっての結果です。
親指ポジションそこからは頭と足の重心位置はそのまま変えず(前屈みにならない)
尻を後ろに引いて(突き出して)
横から見たら「く」の字の形に。
ネックを左肩の鎖骨で完全に受けて楽器が懐に入るような感じ
、、、以前、池田達也氏がジャズライフ紙上のレッスンコラムで言っていた「身体を開く」と言うのと同じ事。
親指ポジションからネックポジションに戻る場合はこしを押し出して再び直立する事で自ずと楽器が戻ります。。
親指ポジションでは二の腕から指先の腕の重みを押弦に利用します。
因みに、他の流儀では以上の身体を使って「くの字」のポジション変更を禁止する場合があるように聞きます。
ピチカートの入力方向と楽器の鳴り方の相関関係を端的に、、、
①指板面/ボディー表面に対して横→に弦をピチカートすると、
箱の表板が主に振動(鳴って)して、迫力のある「ボン」と言うような鳴り方。
サスティーンは短め。傍鳴りはするがサウンドは不明瞭で抜けは良くない傾向
②指板面/ボディー表面に対して縦(直角↓(~↘️45度迄?))にピチカートすると、、、
弦振動が直接、駒から表、更に裏板に至り、表板より裏板が振動(鳴り)して
立ち上がりの早い、クリアで抜けるサウンド。
とぃーん(中高音)、ブィーーィン(低音)と言う感じのサスティーン長めの鳴り方。
①な比べて楽器周辺の音量は落ちた様に聞こえる反面、実は楽器全体が効率的に鳴るため
抜けがよくクリアで遠鳴りする傾向。
客席の音量が上がります
たぬきさん
お久しぶりです。フォームにもいろいろ流儀があるのですねぇ…。
フォームに依るサウンドの特徴というのがあるはずですので、スタイルを固定するのではなく、柔軟にいろいろ試して使い分けるのが、この楽器を長く楽しむ方法な気もします。
私が生来、飽きっぽいというのも関係していますが。