いまさら聖剣伝説2のプレイ感想。やっぱ名作だこれ

先日聖剣伝説3をクリアした勢いでそのまま聖剣2にも手を出したらあれよあれよという間にクリアしてしまった。プレイしながら思ったのだが、聖剣2ってこんなにおもろかったっけ?
聖剣3のレビューを書いてみたところ「ちょっと傑作とは言いづらいなぁ」という結論になったので、2もまぁ似たようなもんだったかなと思いきゃ、いやいや全然おもろい。むちゃくちゃ名作だわこれ。

好きな人には申し訳ないのだが、聖剣シリーズって個人的には「RPGとして作りが雑」という印象の方が強くて、久しぶりにやるとやっぱり色々と気になる部分はあるんだが、それ以上にすっかり感動してしまった。純粋に「いいゲームだったぁぁ」という感想が生まれてくる。

聖剣2といえば当時小学生(歳がバレる)でしかも夏休みに発売されるということで、とんでもない楽しみだった覚えがある。1993年発売。24年前かよ。
我が家には親父、俺、弟、の3人のゲーマーが同居しており、困ったことに全員がRPG狂だったため、とにかくテレビの取り合いだった。なもんでドラクエやFFみたいな大作RPGが発売される度に3人で「1人1日1時間までな!」と協定を結び日々進捗を競い合うという習慣ができていた。聖剣伝説2もそんなRPG家族の期待を背負って発売されたタイトル。当然3人は血眼になってプレイを競ったものだが…。
そんな折、俺と弟だけがおかんに連れられて九州の親戚の家に1週間遊びに行くという予定ができ、親父に俺と弟の2人がかりで「1日1時間しかやっちゃダメ!約束!」と言い残して家を後にしたもんだが、親父がそんな約束を守るわけがなかった(俺が親父でも守らんわな)。帰ったらとんでもないレベルに仕上がった親父のセーブデータを見て怒り狂った記憶がある。
か、かわいい…。

いや、そんなことはどうでもいい。

なんで聖剣2がこんなにいいと思ったか、それを述べるのがこの記事の趣旨である。

聖剣伝説2は和製RPGの王道が詰まったドラマである

聖剣伝説2を自分が何でこうもベタ褒めするか。それはこのRPGが語るのが「冒険」「成長」「出会いと別れ」を凝縮した物語だからだ。当然、30過ぎたおっさんの発言としてかなり痛いことは分かっている。
ドラクエ1の誕生を目撃しリアルタイムに和製RPGの発展に浸かり続けてきたおっさんの価値観を前にして聖剣伝説2は「そうそうRPGはこうじゃなきゃ」と思わせるに十分なのである。これは、FF7以降ファンタジーじゃなくなってしまった和製RPGに馴染みきれてない反動でもある。懐古主義と言われようと、俺にとってのRPGの真価はこれなんだからもう仕方がない。

村の少年のちょっとした出来心が起こした事件がきっかけで話があれよあれよという間におおごとになり、最後はもちろん世界を救う、というよくある話であり、今思うと俺が生涯ナンバー1RPGと信じて疑わない天地創造もそうだったりする。男はまぁこういう話が好きなんだろう。たぶん。アニメを全く見ない俺にとっては、このテのよくある話を享受する媒体はもっぱらRPGとなるなのである。

中盤のフラミーをゲットする前後はいきなり行動範囲が莫大に広がるせいでドラマ性よりも自由度の方が強く感じられるものの、大神殿出現あたりから物語の軸みたいなものが見え始める。そこからは敵勢力にクーデターが起きたり、主人公ランディの出生の秘密が明かされたり、プリムの彼氏(だっけ?)があぼーんしたり、大事なマナの樹がちゅどーんしたり、と大イベントが次から次へと応酬してくると「こりゃいよいよ佳境に向かっているナ」というのが否が応でも分かってしまう。RPGならではの興奮を覚える。当然、「RPGなんだからラスボス倒して平和が戻ってエンディングでしょ」というのは分かり切っているのだが、分かっていてもなおこういうドラマに浸るために俺はRPGをやる。

ふと思うが、次作の聖剣3にイマイチ感動できなかったのは終盤のストーリー構成の差なのかもしれない。神獣を8匹倒すくだりはゲームとしてはクラスチェンジだったり大ボス攻略の醍醐味があるものの、ストーリーという視点ではお使いイベント以外の何物でもなく、急にストーリーの軸が希薄になる。しかもその時間がやたら長い。5匹目倒してる頃には「何で神獣倒してるんだっけ」状態になる。あれが終盤じゃなくて序盤~中盤ならまだよかったのかもしれない。

話を戻すと、このゲームのクライマックスは2つ用意されていると思っている。

ひとつはマナの樹にたどり着いたシーン。
遠くにあるマナの樹を眺めながら、ランディが「ずっと3人でやってきた」みたいなことを言う。このセリフがすごくいい。村のヘタレ少年だったランディが随分と成長したもんだなぁ、とか、物語が始まった頃の生活にはもう戻れないんだろうなぁといった郷愁感、とか、文字通りの仲間感、みたいないろんな感情がこんな短いテキストから感じとれてしまう。
このようにプレイした過去の時間をキャラクターが振り返るというシチュエーションを挿入するRPGはあんまり見たことがないし、これは聖剣伝説2の独特の演出のような気がする。

その後に母親との別れ的なイベントがあり、あまりにベタベタな演出にちょっと笑えるが、それこそが聖剣伝説2のいいところなのだ。

もう一つのクライマックスは最後の神獣戦直前。
こいつを倒せば仲間が消える、でも世界のために涙を飲んで倒さなきゃいけない、という、これもむちゃくちゃベタベタな状況設定。当の主人公たちはポポイの説得ですっかり割り切ってビシバシと神獣を攻撃するが、プレイヤー側にはかなりの葛藤を覚えさせる。プレイヤーの気持ちを揺さぶる演出だと思う。少なくとも俺はそうだった。

ちなみに「神獣を倒せばポポイが消えるのでは?」というのをいきなり述べ始めるのは主人公のランディなのだが、こういうところはちょっと雑だなぁと思ってしまう。ランディがマナの世界についての知識があるような描写は無いし(ほとんど教えてもらう側として描写される)、そもそもこいつ、そんなに頭良くないので「なんでお前がいきなり気付くねん」というのが一瞬で思ったことだ。例えば、マナの樹に教えてもらうみたいな設定にはできたはず。こういうところがひとつづつケアされればより完璧度が上がったのはもったいない。

とまぁ、ベタだけど王道なストーリーにひとしきり感銘を受けるので、宝箱を開けると武器のレベルがアップするという怪奇現象や、魔法で中ボスが瞬殺できてしまうバランスの悪さとか、ここで言うまでも無いが各種バグとかがどうでもよくなる。

マルチ主人公制をとった聖剣3ではここまでの演出はできないよなぁと考えると、やっぱりRPGは聖剣シリーズに限らず固定主人公でええやろと思ってしまう。キャラクターデザインは3の方が優れてると思うものの、やっぱりストーリーに肉がつかないと感情移入できないよねと思わせるいい例だ。俺はRPGにキャラゲーであることを求めない。

とまぁベタ褒めしといてなんだが、ケチが無いわけでもない。特にセリフのライティングは全編通して「もうちょっとどうにかならんかったのか」という気がする。この頃のスクウェアRPGのたいていはテキストが雑で(FF4やロマサガとかが特にそう思う)、そこがもうちょっとちゃんとライティングされるだけで相当な神ゲーになった作品は何個かある気がする。その点ライブアライブは異色なくらいにライティングが神がかってた。

音楽

あと、2と3をほぼ同時期にやって確信したことがある。ストーリーにドラマがあると、音楽も同時にドラマ性を持つ。
改めて聖剣2と3のサントラを聞き直すと、楽曲としてのクオリティは両者で同等だと思った。だけども、どうしても聖剣2の音楽の方が単純にいいと感じる。その理由の一つが、ひとつひとつのシーンと結びついて聴けるからだろうと思った。
まぁ分かってはいたけど、ゲーム音楽というのは楽曲だけで語ることはできないんやなぁと痛感した。

バトルシステム

バトルシステムについても、3と比べると2の方が良かった。これは他の方のブログでも言われていることでもある。
広大なマップで散らばる敵キャラと随時闘うという発想は、ドラクエやFFと全く違う戦闘スタイルを確立したという意味で意義が深い。ところが聖剣3ではマップを小刻みにしたせいで、実質には戦闘開始→終了という従来のスタイルに戻ってしまった。あとマップの敵を倒した後の「WIN!」は正直、意味が分からんよなぁ。別に3になってシステムが後退したというつもりはないが、あの結果は意図があってディレクションを変更したというよりもシステム的な制限か何かで「こうせざるを得なかった」という気がしてしまうのは残念。
結果として聖剣3はボコボコ殴りまくるゲームになってしまったが、聖剣2は(それなりに)ヒットアンドアウェイを駆使ししながらMPが少ないので魔法の出し惜しみをせざるを得ないという戦略性の高いバトル設計になっていたと思う。

まぁある意味こういうインタラクティブなバトル設計は聖剣2で完成してしまっていたと考えるほうがいいかもしれない。

たぶんRPG最高峰のパッケージビジュアル

最後にもう一点。聖剣伝説2といえば本当に印象的なメインビジュアル。このビジュアル、改めて調べると磯野宏夫さんというイラストレーターの方の作品。確か去年くらいにTwitterで亡くなられたことを見た。
磯野宏夫でGoogle画像検索するとその世界観がわかるが、本当に緻密で美しい世界を描く。

著作権的にブラックなのは承知だが、敬意を表し、また故人の作品がもっと広まってほしいという想いから敢えて貼らせて頂く。

secret-of-mana_visual

ゲームをプレイする前なら「これが何なのかわからないが大きな何かを予感させる」し、ゲームプレイ後なら「村を追い出されてから起こった出来事を思い出させる」、そんなビジュアルだと思う。このゲームを象徴するビジュアルとして非の打ち所が無く、というか他にビジュアルが全く思いつかない。

物語のクライマックスシーンが描写されていて、これは聖剣3でも同じことが言える。絵が美しいこともさることながら、ゲームのプレイ前の人が見ることが多いパッケージビジュアルにこのシーンを選ぶのはすごい。RPGのビジュアルである意味「核心に触れつつネタバレにならないというギリギリのライン」を攻めた、こんなビジュアルは見たことがない。

ということで

イマドキのRPGに納得できない人なら、久しぶりにプレイするといろいろ思い出す作品だと思う、という話でした。

好きな人はサントラ必聴。