フロントミッションの1stと2ndはリアルタイムにプレイしたのですが、3rdは「なんかキャラデザと世界観が好きになれない」という理由でスキップしてしまい、現在に至ります。それまで50万本あったセールスが今作で30万本に落ち込んだあたり、当時もそういう方が多かったのでは無いでしょうか。家族ぐるみで1stと2ndを遊んだ我が家でも、3rdはあまり話題になりませんでした。
社会人となった今では何十時間もかけてRPGをプレイする余裕が無いものですから、YouTubeのプレイ動画を視聴するという形式でこのゲームを堪能してみました。そして自分の手でプレイしていないにも関わらず感想を書いてみるという、RPGマニアを自称する者として疑問が残る暴挙に手を出してみます。
で、つい先日2つのルートのエンディングまで見終わったのですが、「当時プレイしときゃ良かった」と素直に思いました。
ストーリーのスケールが大きく、意外性のあるストーリー展開が目白押しなので、「パッと見の世界観が地味な割にはひとりひとりのキャラクター設定がかなりぶっ飛んでいる」という違和感は次第に機能しなくなり、純粋に「話の続きが見たい」という気持ちが大きくなって行くのを感じました。
ストーリーの軸がまだ曖昧としている序盤はどうしても頭のネジが飛んでいるキャラクター達に焦点があたるので、そこにアレルギー反応を示す人にはつらい気がします。こればかりは動画視聴という楽しみ方をしたのが幸いしたのかもしれません。
キャラクターの頭がおかしい
ネットでさんざん言われている事ですが、主人公である武村和輝のサイコパスぶりが凄まじいです。Wikipediaでの紹介はこうですが
正義感が強く誠実だが、一度決めたことは頑として譲らない頑固な性格である。提案する戦法のほとんどが正面突破であったり、義妹アリサのこととなると見境の無い無鉄砲さを見せるなど勢いで攻めることが多い。
妹の危機に際して軍に銃口を向け、国際的なテロ行為に手を染めていく事に全く躊躇しない19歳というぶっ飛び設定を、こんな紹介文で片付けていいのでしょうか。
「主人公には感情移入するものだ」という前提でこのゲームをプレイするとこちらの精神がやられます。「生暖かく見守ってやろう」くらいの距離感をできるだけ早めに構築できるかどうかが今作をRPGとして楽しめるかのひとつの分岐点になろうかと思われます。こいつをもうちょいまともにしておけばセールスが5~10万本は上がったのではないでしょうか(言い過ぎ)。
対概念として用意されている親友の草間亮五ですが、主人公があまりにピーキーなので中和剤として機能する彼もかなりピーキーでにならざるを得ません。
妹への愛が行き過ぎてテロリスト化していくド天然の主人公に対し「言い出したら聞かねぇもんなお前は」みたいなノリでほいほいと付いていく異常な包容力を発揮し、どれだけ戦況が不利であろうがボケ役として体を張り続ける19歳。主人公の影に隠れがちですが、彼も相当イカれている…というのが自分の率直な感想でした。1トンの重りに釣り合うのはやはり1トンの重りなのです。
分岐ストーリーの両方を味わってこそ本懐
そんな事より重要なのはストーリーです。非人道的な実験に手を染める国家の思惑に振り回される個人を描くというフロントミッションシリーズのお家芸はしっかり健在。
1stでは人の脳を使ったコンピューター(カレンデバイス)、2ndでは衛星ハッキング兵器(フェンリル)、と来て、3rdでは「核兵器以上の爆弾(MIDAS)」と「遺伝子操作人間(イマジナリーナンバー)」と2つの禁じ手を出してきました。正直言うとどっちか片方だけでもRPGのストーリー1本作れたのでは?という気がしないでもないですが。
この禁じ手がエゲつないほどストーリーの高揚感が上がるというもので、1stの衝撃には及ばないものの2ndよりはいいセン行ってると個人的には感じます。終盤は「国家という概念を信用できない」という気分になってきました。
3rdで最も評価したいのはストーリー分岐システムです。
選択肢でストーリーが2つに分岐します、という手法自体は目新しくない…ように見えて、ここまで話を作り変えている作品は珍しいのではないでしょうか。
最後の結論だけが共通しているが、そこに至る協力関係や犠牲はまるで逆のもの。アリサルートで準主人公役を張ったリュウを、エマルートではこちらが殺す側に立った時、プレイしている我々は結構な気持ち悪さを覚えるはずです。この「パラレルワールドの両方を見たからこそ感じる気持ち悪さ」がフロントミッション3rdが描く世界の最大の特徴ではないでしょうか。
この感情はゲームの登場人物では絶対に体験できないプレイヤー側だけの特権であり、これぞRPG表現と身が震える思いがします。RPGをやってるんだから、「RPGでしか表現できない事」を目の当たりにした時にやっぱり一番興奮します。
どちらのルートも同じ正義、つまり「ルカーヴとMIDASを止める事」が共通しているはずなんですが、身の置き場所によって生き残る人間と死ぬ人間が全然異なってくるので、読後感としてのモヤモヤポイントもきちんと別々になるよう作られています。よくこんな話作ったなぁ。
巷では「片方だけ見たらだいたい分かる」と言われているようですが、個人的には両方とも見た方が全然おもしろいと思いますし、なんなら両方見ないと今作の真髄が味わえないと思います。
イマジナリーナンバーは短命であるという設定がどこにも効いてないとか、アリサ編においてエマがルカーヴに協力した文脈がよく分からないとか、エンディングに主人公とエマとアリサ以外出演しないとか、腑に落ちない点もそれなりにあるのですが、2本ともルートを見て「国が考える事はえげつないなぁ」という恐怖心が残るあたり、フロントミッションが描きたい世界として成功しているのだと思います。
たぶんですが1stや2ndでのセールスを拡大しようという意図でそれまで構築してきた世界観をガラリと変えてしまった事が逆にファンを離れさせた気がしないでもないですが、意外や意外、やってみるとフロントミッションらしさは肝心なところをしっかり抑えていると思います。
ナンバリングの中では最も賛否両論らしいというのもうなずける本作。人を選ぶのは事実だと感じますが、スクウェアが出したという点において恥じない良策だと感じました。
最後に、UIデザインとブランド
最後に小言ですが、シリーズの特徴だったあの読みづらいけどカッコいい英語UIを捨てちゃったのはかなりマイナスポイントだと感じました。
これこれ。
UIデザインってRPGの世界観、大げさに言えば「ブランド」だと思っていて、ドラクエはあのトラディショナルなUIを残す以上ドラクエであり続けるし、逆にFFはあの青いUIを捨ててFFじゃなくなった感あるし、もっと大事にされていい要素だと思います。
3rdのもったいないところは魅力を感じづらいキャラクターだと冒頭で書きましたが、UIの変化も大きいと感じます。当時のゲーム雑誌を見て「フロントミッションの続編だ」という感覚がなかなか持てなかった記憶が強くあります。推論の域を超えませんが、それももしかしたらセールスに響いたのでは無いでしょうか。

