ファイナルファンタジー4(DS版)感想と、リメイクについて思う事

Amazonで酷評吹き荒れるこのリメイク。
※2020年5月に見てみるとそうでもありませんでした。分布変わった?

1からほぼリアルタイムで体験してきたFFナンバリングタイトルの中でも、FF4は一番思い入れがありまして、SFC版は何度クリアしたか数えきれません。何周もやりすぎて、当時ファミ通で出てた最速クリア記録よりも短時間クリアを果たした事もあります。ちょっとした自慢です。
Amazonのレビューを気にしながらも、あの気分にもう1回浸りたいなぁと思いプレイしました。

SFC版からの主な変更点は以下の模様です。

  • かっちょいいオープニングムービー追加
  • 全編3D化
  • インターフェース刷新
  • 一部イベントに声入り
  • 若干の新規イベント
  • 仲間のアビリティを引き継げる「デカントアビリティ」システム
  • 謎のポーチカシステム

とりあえず細かいところから感想を述べます。

マゾ仕様のバトル

ストーリーをもう1度味わう事を目的にしているので、戦闘でいちいち時間を割くのも面倒。ということでもう最初から攻略サイトや攻略本を縦横無尽に駆使して進めました。かなり計算して無駄なくデカントアビリティを振り分けたりしたので、攻略情報無しのプレイに比べると相当なアドバンテージがあったはず。それでようやくSFC版と同じ難易度(実感値)。

そらAmazonでも「敵強すぎ」て言われまくるわな…。

こちとらSFC版の知識もフル活用しながらこれなので、初心者には相当厳しいはず。SFC経験者向けのチューニングなのかな?という気がしました。

キャラのポリゴンがイケてる

グラフィックは全体的に好ポイントでした。
特にキャラクターのポリゴン化は、使えるポリゴン数が少ないだろうといった技術的制約がありながらも、造形やテクスチャのデザインが工夫されていて、ポリゴンキャラで初めて「愛せる造形」だと思いました。デザイナーさんの試行錯誤を感じる、いい仕事だと思います(誰目線だ)。
今までポリゴンのキャラデザインがイケてると思った事が無かったので、今作品でブレイクスルー感がありました。

音質が残念

一方でサウンドは残念でした。音質が悪すぎてプレイしてていちいち気になるレベルでした…。特にトランペットの音が笑えるくらいチープでした。その直前にプレイしたドラクエ9の音質がかなり良かったため、落胆もひとしお。

本物のトランペットのサウンドを再現して欲しいという意味ではなく、「聴いてて気持ちいい音」へのチューニングを目指して欲しかった、という印象です。
これはグラフィックもサウンドも同じなのですが、リアル楽器の再現を目指して技術を中途半端に使うぐらいなら、電子音源としてのクオリティが追求されるといいのになぁと思ったりします。ファミコン音源はその最たる例です。

アクトレイザーの音質にビビったFF4のサウンドスタッフがドライバを開発しなおしたというガッツはどこへ行ったのか(この話自体が都市伝説くさい気もするけど)。

デカントアビリティは画期的だった

これは相当良かったです。最終メンバーを固定化したからこそストーリーの芯がグッと出ているのがFF4の最大の良さだと思っているのですが、それは同時に、離脱したキャラクターはストーリーが進むにつれどんどん空気になっていくという最大の弱点も生み出しました。デカントアビリティのシステムはこれを鮮やかに解決していると思います。

ストーリーの補完というだけでなく、キャラメイクのバリエーションがむちゃむちゃ広がり、「これぞRPGならではの楽しみ方!」という気分も盛り上げてくれます。SFC版ではぴょんぴょん飛んでるだけだったカインが、限界突破によってでたらめなダメージを与えるようになったのを見て、セシルの下位互換という汚名をきっぱり返上した感があってかなり胸アツでした。

FF4リメイクで最も評価したいところです。

懸案だったRPGのボイスは意外といいかも

青臭いストーリーの青臭さをモニター越しに生温かく見守る、というのが自分のFF4の楽しみ方だったのですが、DS版ではボイスとムービーが加わることで、自分の許容範囲を軽々と突破された感があります。こっちが脳内で都合よく補完しているイメージを無視してガンガン上書きされていってる気になります。
まぁ、制作陣が考える世界観と自分のイメージに乖離があった、と言えばそれだけなのですが、その事実に気付かされる事自体がちょっとショックではあります。

特に序盤は慣れませんでした。と言いつつこれが不思議なもので、なんだか中盤から慣れてしまい、最後はむしろボイスあって良かったかも、ぐらいには思ってしまいました。ちょっとRPGのボイスに対する見方が変わったかもしれません。

ただ、FF4が誇る魅力溢れるキャラクターの中でも、最終メンバーのセシル、カイン、エッジの3人の声だけは最後まで違和感が拭えませんでした。SFC時代からほとんど感情移入出来なかったセシルは、声優の演技力のせいなのか分かりませんがよりロボットみたいなキャラクターになってしまったと感じました。やはりFF4の主人公はカイン…。
リディアとかシドの声は凄く良かった気がします。

余計だと感じたキャラ付け要素

メニュー画面を開くと、先頭のキャラクターが何かぶつぶつ喋るという、ドラクエで言う「仲間に話しかける」に似た機能が実装されてます。
しかしあまりにセリフライティングのクオリティが低い。攻略の助けになるような情報はほぼ皆無だし、ドラクエみたいにクスリとさせるセリフも無い。キャラ立ちを意図した機能であるのは間違いないのですが、却って中途半端な印象でした。正直、無かった方が良かった。逆にドラクエ、というか堀井雄二さんはテキストの天才なんだなぁと気付く結果になりました。
自分は「とにかくFFは6まではテキストが苦手」だと思っていて、この機能はこの作品の首を絞めるだけの結果だったように感じます。

とはいえほとんど全てのテキスト見たあたり、私のFF4愛が伺い知れるというものです。

あと余計だと思ったのはカインの追加シーンです。
自分にとってのFF4の主人公であるカインの、ヘタレっぷりが暴露された幼少期の追加イベント。誰が得する演出なのかが全く分かりませんでした。どうせなら徹底的にカインをネタキャラにしてやろうという意図なのでしょうか。だとしたら制作陣のカイン愛がかなりねじれている。
あとセシルの親父の追加イベントも、ストーリーへの深みを与えるものではなく、やっぱり必要だと思えませんでした。

本題: これはFF4なのか?

さんざん言いたいこと言いましたが、自分がこの作品に対して最も気になったのは、「これはファイナルファンタジー4」なのか?という点です。

もともとFF4というゲームが持っていた「あまりに分かりやすい人形劇の観客になって、謎の感動を味わう」とでも言うようなあの体験。あれが全然別物になってしまったなぁ、というのが致命的だったように思います。一言で言うと「ストーリーとキャラクターが同じなだけの、別のゲーム」になったと思ってしまいました。

誰のためのリメイクだったのか

ゲーム制作者じゃ無いながらにも、リメイクというのは本当に悩ましい仕事なんだろうなぁと推測します。
リピーターと新規ユーザーの両者の顔色を伺いながら、ストーリー、キャラクター、システムのトレードオフをひとつづつ調整していく…という作業は想像を絶します。冒頭で述べたバトル難易度ひとつとっても、FF4を知り尽くした人と、ゼロから始める初心者、両者を相手にどの難易度がベストな着地点か、なんて恐らく誰にも答えが分からない世界だと思われますが、それでも製品化のために一つの解答を作らなきゃいけないのは相当大変そうです。

それは多分、政治家のようなもので、何をどう言っても右か左かのどちらかからは批判される。FFという大作だからなおさらだし、一方でコンシューマは自分がどちらの立場だろうと「自分を満足させてもらう」気マンマンでソフトを買うのだから、まぁ勝手なものですよねぇ。自分も含めてですが。マーケット心情がけっこうカオスな分類に属するんじゃないでしょうか。

自分はこのリメイクに対して「コンセプトが甘かったのでは」という感想を持ちました。
ストーリー、キャラ、演出、システム、それぞれを誰向けに・どのようにアップデートするか、という視点がバラバラで、一本の作品として振り返るといびつな印象があります。キャラ付けを強調するシステム要素があるかと思いきや、ストーリーのアップデートは中途半端で追いついていない、のような。だからだと思いますが、RPGとしての「手触り感」が原作からかなり別のものになってしまった感がありました。

「王道のドラクエ」に対するカウンターポジションとしての「イノベーションのFF」が、リメイクをより一層難しくしているのかもしれません。

ドラクエの一連のリメイク、自分がプレイしたのはSFCの3、PSの4、PS2の5ですが、いずれもドラクエの手触りが強く担保されているのを感じました。
ドラクエの場合、絵の路線がよっぽど変化しない限り、あの堀井雄二テキストが残っているだけでドラクエ感が残る。ドラクエたるブランドが何かがハッキリしている、とも言えます。
ブランドとしてリメイクがしやすい土壌がある上に、ドラクエのリメイクは「ここは変えなくていい」というポイントを抑えているように感じます。劇的にバトルシステムをアップデートしたりしない。王道である事自体がブランドであるドラクエの特権のような気もします。

ある意味「いろいろアップデートする使命がある」FFのリメイクにおいて、コンセプトを一本化する事自体の難易度が高かった気がしました。
完全リピーターである自分にとって、アップデートのちぐはぐ感が「FF4の手触り」を異質なものに変化させてしまい、「FF4の追体験」とも「新しいFF4の新体験」とも解釈できない時間を数十時間続けるうちにエンディングを迎えた、というのが私のDS版FF4の体験でした。

さすがの大型IPなので、ひとつのRPG作品としては純粋に楽しめました。リメイクとして見てみると、気になる事が多かったなぁという感じです。

最後に紹介しますが、このムービーはかなり秀逸だと思っています。歴代RPGのオープニングムービーの中でもかなりのかっこよさだと思っています。

それだけに期待値が高くなりすぎた、のかもしれません。

2020年5月27日、だいぶ修正しました。
2015年1月14日、ですます調に変更しました。