FF7の功罪について考える。デフォルメすることとか、作家性とか。

なぜか急にこんなテーマでFF7について書いてみたいと思いついたので書いてみた。もう15年前のゲームなんですね。

2年前くらいに会社の先輩からPSPを譲ってもらったのをきっかけに高校生以来となる2周目プレイをやってみたら、当時よりもおもろいと感じました。それまでFFは4が一番好きだったんですが、その座を奪い取った感もあります。海外を中心にFFのナンバリングタイトルで一番評価がいいのは7のようですね。

で、この作品のどこにエクスタシーを感じるのかをちょっと考えてみたんですが、意外と思いつかないんですよね。FF7はここが好きだ!と言い切れるポイントが。ストーリー、音楽、キャラクター、戦闘、ミニゲーム、うーん、どれかが特にすごいという風に思えない。

で、残った結論として、この作品はベンチマークになったからすごいんだと。そういう考えに至りました。

当時の和製RPGのほとんどがドラクエのフォーマットの影響下にある中で(まぁドラクエもローグというフォーマットがあったとは言え、それは別の話で)、そこから脱皮して最新のRPGの新機軸を打ち出した事自体がすごかったのかな、ということです。

中学か高校の頃、弟とよく、エアリスが死ぬのは納得がいかんとか、いやあれが無いとストーリーが、みたいな議論をしていたところ、いきなり親父が現れて一言。「おまえらは何をくだらない事で盛り上がっとるんだ」と。

黙る俺と弟。

「あのゲームは歴史を変えたやろうが」

何故か今になっても強烈に覚えているエピソードなのですが、今思うと、この親父の言葉がFF7という作品が持つエッセンスなのでは、と思ったりします。

そういえば当時の我が家では初期型番のPSを使っていたのですが、発売日の朝に買ったFF7が読み込み不良で動かない。あまりにFF7がやりたすぎる親父が俺と弟に3万円を渡して「これでPS買ってこい」と言って最新のPSを買ってきて、無事にFF7が動きました。それ以来我が家にはPSが2台あるという状況になりまして、こんな家庭は俺の知る限り我が家だけでした。

脱線した。

親父が言う「ゲームを変えた」というのはもちろん賛辞ですが、自分はそれが必ずしも良かったとは思っていません。FF7の後、つまり今のRPG市場にあんまり魅力を感じないからです。
FF7が起こした変革は今考えても歴史的に必然だったでしょう。仮にFF7がやってなくても他のゲームがやってたはずです。まぁ、それに対していちゃもんをつけようとしているのですから、以下は完全に俺の趣味の話です。

昨今のRPGを乱暴に分けると「リアル路線」と「アニメ路線」と「ドラクエ」に三極化してると思ってます。
ここでいうリアル路線という系譜を作り上げたベンチマークとしてファイナルファンタジー7は評価されますよ、という意味でここまで書いてきたわけです。ちなみにアニメ路線は細々したものはありましたが、やっぱりテイルズオブファンタジアが金字塔になるんですかね。こちらはちょっと早くて1995年。ドラクエは、もちろんドラクエです。

俺はドラクエ信者なのでどうしてもドラクエをトップブランドとして見るわけですが、それはリアルでもアニメでもないブランディングを確立したクリエイターのバランス感覚に対して感じるものです。

で、結論から言ってしまうとリアル路線のRPGがどうしても好きになれない、ということになるんですが、これは別にデフォルメされたキャラクターしか好きになれないという意味で言ってるわけではありません。リアル路線は極論として作家性が消失する宿命を持つという意味で言っています。

作家性という言葉が分かりづらければ、世界観とか、オリジナリティとか、特徴とか、そういう言葉で置き換えて頂いても結構です。

これは昨年TGS(東京ゲームショウ)に行った時に痛感したことです。どのメーカーのブースにも映画と見紛うばかりの出展映像に囲まれる中、俺は「どれも一緒やんけ」と思ってしまいました。

これは、リアル化という力学の行き着く先が我々が生きている現実のただ一点を志向することを宿命としているからだと考えています。逆に言うと、ファンタジー系フィクションの醍醐味は、「不自然さ」や「あり得ないこと」の表現を許容することで成り立っているとも言えます。
SFCまでは、ハードの技術の低さを背景に「デフォルメする事しかできなかった」、どこをそぎ落として、何を劣化させてデフォルメするか、その引き算の過程で作品それぞれの世界観の差が発生したのではと思います。

デフォルメすることを捨てた作品は現実的という一点に収斂していくことを余儀なくされる、そこに向かっていく大量の作品群に囲まれても、自分はあれもやりたいこれもやりたいというエクスタシーを感じられていない。
まぁ要するに、レトロゲーム信者ですという告白をわざわざスペース使ってやってるだけなんですが。

せっかくなんで、ではアニメ路線。
ここで言うアニメ路線というのは、絵がアニメになっているという意味ではなくて、演出や世界観がテレビで見る「アニメ的な文法」に収まったテイストを指しています。で、個人的には相性が悪いです。悪いというか、理由は分かりません俺はアニメに拒否反応があって見ることができません。

ということで、自分の中ではドラクエが唯一のRPGブランドとして生き残っているわけです。

なんだかFFの話をするつもりがドラクエの話になってしまいました。

FF7は好きなゲームだし否定するつもりはゼロです。
仮に俺が時計の針を戻せたとしても別にFF7の開発を止めるとは思いませんが、自分が歳をとったことと、FF7が変えたRPGの世界がうまいことリンクして、RPGをやらなくなって久しい今の自分がちょっと寂しいなぁと思ったりします。