ドラクエ展に行って、ドラクエブランドについて考えたこと

やはり自分にとって「ザ・RPG」と言えばドラクエ以外無いわけで、もちろん行ってきました。日曜の夜8時にくらいに行ったら並ばず入場できましたよ。

自分が単に大のドラクエ好きということもありますが、制作従事者として何かヒントがあるかも、と期待して行ってきました。
堀井雄二氏をはじめとするドラクエ制作陣のものづくりへの姿勢が伺えたのが良かったし、加えてイベント企画者のものづくりへの姿勢に感銘を受けたのも大きな収穫でした。

総じて「ドラクエでしかできない」空気が充満した、最高のイベントだったと思います。

とにかく「いい仕事」でした

細かい企画や演出が散りばめられていて、終始楽しいイベントでした。
それは「ドラクエを懐古する」という意味だけでなくて、会場を企画した方の構成力に関心したからです。ドラクエらしさを抑えた上で、「ユーザーに楽しんでもらう」という基本姿勢ががっつりと伝わってくる「いい仕事」だと思います。
そしてそれはドラクエが第1作目から持ち続けているブランドでもあると思っています。

タイトル自体に和製RPG最長の歴史を誇る以上に、ドラクエが築いてきた世界観や「ゲーム性」をしっかりと踏襲したことで完成されたイベントだと言えるのではないでしょうか。
ドラクエ以外のタイトルをイベントにしても、多分こうはならないでしょう。

ドラクエが持つ「おもちゃ箱感」をそのまま現実に持ってきたようなイベントで、大げさでなくプロの仕事の気迫を垣間見たように思いました。

チケットにも拘りが

現場でもチケット買えるんですが、ローソンで事前にチケット買っとくと会場でプレミアムチケットなるものに変更してもらえます。これが厚紙に印刷されてなかなかいい出来でして、裏には名言集なんてものも印刷されており、わりとテンション上がります。
テキストが秀逸なドラクエだからこそできる演出かと。

お値段ごいっしょなので、是非ローソンで事前にチケットを買っておくことをお勧めします。

会場の様子

行った人のほとんどが撮るであろう入口のスライムタワー。

入口が「ダーマの神殿」、グッズ売り場が「どうぐや」と名付けられているなど、あらゆる場面にドラクエのギミックが張り巡らされており、ファンはニヤリとさせられますね。ドラクエ未経験でこの空気感が分からない方にとってはどう映るのか分からんけど…

このダーマの神殿で職業を選び、職業ごとの「冒険の書」を渡されます。
こんなところでも原作に忠実です。
基本的にフロア案内図なんですが、職業ごとのミニゲームも兼ねており、ルートを追うごとに徐々に謎を解き明かしていく仕様。ドラクエが持っている「ゲーム性」に通じる構成になっています。

会場はざっくりとこんな感じで進みます。
1. 過去の作品のギャラリー
2. りゅうおうを倒す参加型イベント
3. 手書きの資料集やポスターギャラリーなど
4. グッズ売り場(どうぐや)
5. ルイーダの酒場(飲食)

個人的には「資料集」が目当てでした。
堀井雄二氏が何を考えながらこの作品を作ったのかということに興味があったからです。

過去の作品ギャラリー

ドラクエ1~9のキャプチャが壁一面に貼られたルートを1から9の順に周ります。
会場は基本的に写真撮影がNGです。ルートに点在している実寸大モンスターの置物(?)だけ許可されてます。

スライムナイト

これは惚れ惚れするようなキャラクターデザインですねー。
鳥山明って漫画家というよりデザイナーとしての側面の方が好きです。
ただ、下のスライムの造詣が何かおかしいような…

おおきづち?

カラー的におおきづちじゃなくてブラウニーでは…
ちなみにこいつが持ってるハンマーがクソでかいです。
こんなので殴られて10ダメージとかで済むわけがありません。

りゅうおうを倒します

参加型イベントがあります。参加者から各職業の代表者を選びパーティーを組んで、画面のりゅうおうを倒すという設定です。
それ以外の人は後ろから観戦しますw

司会されてる方のハイテンションぶりが良かったです。
たぶん朝からずっとやられているからでしょうが、声がガラガラになっていました。
「いいベギラマ持ってますね~」
「(小さなお子さんが泣きだすと)ああっ未来の勇者様が」

など、名言が多かったです。
たぶんこの人自身がむっちゃドラクエ好きなんやろうなぁ。

そういえば、自分たちの組のときは勇者役のなりきり具合がものすごかった。
勇者の剣を授かる仕草とかがいちいち練習してきたんちゃうかと思うくらい。
※勇者には2回目以降の訪問でしかなれません。

現代社会に生まれ落ちた勇者だったのでしょう。彼にとっての魔王は誰なんでしょうか。

手書きの資料集

一番の目当てだった堀井雄二の手書き仕様書があります。写真NGだったのは残念ですが、公開されていたページは全部食い入るように見てしまいました。

展示されていたのはドラクエ1~3の一部(1がメイン)。
ブロック単位で街やダンジョンのマップ仕様書まで作成していたのは仰天しました。
それにトレペでキャラ配置や台詞を上書きしているという…
マップとシナリオを同時に考えているようです。
あとは必要なアイコンリストの作成とかもやっていたようです。

メモリ削減のため1で行っていた必要テキストの精査なども氏によるもののようでした。

さすが元プログラマー。
てっきり企画やシナリオライティング部分だけをやっていたのかと思ってました。
(さすがに規模が違う最近のタイトルではもっと分業していると思いますけど)

自分がいるweb制作業界でも、ディレクターが技術仕様に明るいかどうかでプロジェクトの円滑さが全然違います。
制作陣にとっては頼もしい存在だったのではないでしょうか。などと妄想してしまいます。

すぎやまこういちの手書き譜面

もありました。なんかオーラがムンムン出てました。
てっきりオーケストラ的な譜面を書いて、そこから3和音に落としているのかとずっと思っていたのですが、そうではなく直接3和音の楽譜を書いていたみたいです。
多分頭の中ではスコアができていたんだとは思いますが。じゃないとあんな曲書けへんと思う…

展示されてたのは5曲くらいです。

ルイーダの酒場

ルイーダの酒場は20分並んで待つ割にはメニューに惹かれなかったのでパスしました。
スライム肉まん食べたかったけどそのうちコンビニで出るしねぇ。

戦利品

こういう場に行くと何か買わないと気がすまない性分ですので、例に漏れず何か買いました。

ドラキーのフィギュア(?)

後ろにいるのは大昔に秋葉原で買ったデスピサロです。

すぎやまこういち本

Wilっていう雑誌のすぎやまこういち特集です。
心から尊敬するセンセの特集ということで、買わないわけにはいきません。

ドラクエブランドだからできること

このイベントに触れて、改めてドラクエというブランドというものを考えました。考えましたというか、感じました。それは、ドラクエが未だに「ゲームであること」を忘れない、数少ないRPGタイトルだということです。

多分ゲームを「娯楽」として制作するセンスが飛びぬけてすごいんだと思います。
ドラクエは「何を作るか」じゃなくて「どう遊んでもらうか」がトッププライオリティなんではないでしょうか。少なくとも自分は歴代ドラクエを全てプレイして、そう感じています。
それは堀井雄二氏の「エンディング見て良かったと思われるゲームより、プレイしている時におもしろいと思われるゲームを作りたい」という言葉に現れています。

想像ですが、氏がはじめてコンピューターでインタラクティブな遊びに触れた原体験が、よほど強烈だったのだと思います。

いろいろRPGやってると、たまに「これ、映画でやった方が良かったんちゃうか」とか思うようなゲームに出会います。最近は顕著です。
時代の流れとして、RPG表現が映画やアニメ的な文法に帰納していくのを感じます。

ドラクエを第1作からほぼリアルタイムにプレイしてきた背景が大きいんでしょうが、自分にとってRPGは「デフォルメ化された世界を遊ぶもの」です。
上で「ゲームである」と言ったのは、表現が「生々しくない」ことを指します。ドラクエでは画面の中の出来事をデフォルメして見れるように、自然に設計されているように思います。
完全に個人に趣味で言わせてもらうと、生々しいRPGというのはやっててちょっときついです。

そして最近のRPGは「プレイアブルなもの」と「魅せるもの」の間で大きく迷走しているように見えます。

そんな中、ドラクエがコンセプトを維持し続けた上で25年間有り続けてきたという歴史を見ても、自分の中ではドラクエは「ザ・RPG」であり続けるわけです。

ドラクエ10やりてぇ。