ドキュメンタリー映画「Vanishing Point」の公開が近づいているせいか最近ブランキーのことを思い出すことが多いので、思いの丈をここにガーっと書いとこうと思います。
解散から10年以上経っても自分にのとっての「ザ・バンド」で、どうやら一向にこれを超える価値観が見つかりそうにない。多分一生聴き続けるんだろうと思います。なんで自分にとってこういう存在で有り続けるのか、一度棚卸ししてみよま〜い、というのが動機です。
この人たちを好きな理由ってのはいろいろあって、楽曲が良かったり、キャラが天然で面白かったり、ライブにストイックで、音楽に真面目なところ、ファッションとかいろんな要素があるわけだけど、きっかけになったのはこの人たちが生み出す楽曲と相性が良かったからだと思う。
聴き始めは高校1年か2年くらい。頭を殴られるような衝撃的な出会いがあったとかじゃなくて、バンドのギターが持ってきたデモに何曲か入ってたから知った、ていうくらい。バンドで”15才”や”Punky Bad Hip”、”Dynamite Pussy Cats”、”Skunk”、”John Lennon”なんかをコピーするうちに、C.B.Jimiを狂ったように聴き続ける自分がいた。その辺りの経緯はよく覚えてないけど、気付いたら「もうこのバンドしかない」状態になってた。
楽曲から滲み出る世界観にやられたんだと思う。
当時の中高生なら誰でも聴いてたGLAYとかラルクとは一線を画す、具体的でリアリティのある情景がそこでは歌になっていた。勝手に固有名詞を使って構築される世界観に、単純に「おもしろいなぁ!」と思った。あと、外国文学を読んだ影響と思われる言葉遣いも新鮮だった。
もちろん、ライブ映像もどんどん見ていった。
俺自身、ロックという言葉に執着は無いけど、そこに音楽しかないライブのパフォーマンスはブラウン管を通してもかっこよかった。
ひたすら音と音のせめぎ合いに集中している様子は、ジャズのエッセンスに通じるところがあると思ってる。彼ら、特に達也がライブでのアドリブ感あふれるプレイも通じるところがある。もしかしたら自分がジャズベーシストになったのも、何か繋がりがあるのかも知れない。
彼らの音楽を無理やり例えると、ベンジーがハンドル、達也はエンジン、照ちゃんは道、って感じ。俺の中ではそんなイメージ。
生まれ以てのフロントマン、ベンジーと達也のせめぎ合いがライブを加速させるのは目に見えて明らかなことだけど、そこに山のように動かない照ちゃんが鎮座しているからこそ、彼らの楽曲がはっきり形になるんじゃないかと思ってる。たまにあるセッション映像見ても、照ちゃんは延々とルート弾き、ていう場面が良くある。こんなことができるベーシストは見たことがない。あんだけ派手なやりとりをやられたら、ついつられて乗っかかりそうになるよな普通。この人にはそれがない。もう邪念がマジで無いんだな多分。
失礼だけども楽器のテクニックが相当高いってわけでもない。ミスなく弾くとか正確に叩くとかだったら大学生のジャズプレイヤーにもっとすごい人はいる。けど、それ以上の魅力を持ってるのは、楽器を弾くというレイヤーじゃなくて、音楽を創るというレイヤーでこの3人が考えていたからだと思う。
という感じで「どえりゃーかっこええバンドだなぁ」と思っていたところ、インタビュー集「WILD WINTER」を読んで、トドメを刺された。
こんだけストイックなことしてる人たちなのに、中身は天然なんだなぁこの人たち。純粋って言った方が近いのかな。この人たちほんとおもろい。
達也が深夜プールで泳いで捕まった話とか、照ちゃんが枝豆とプロレスする夢を見た話とか、雑誌のインタビューでは見れない素の姿はピュア過ぎて、年上なのに可愛く思えるくらい。そしておもろくてほんまに声を出して笑ってしまう。
この人たちは自分の音楽についての話を嫌う。
他のバンドのインタビューを碌に見たことが無い俺が言うのも何なんだが、やっぱり見栄が全く無いんだろうなぁ、と思う。
はっきりと「あぁ好きだわ」と思い始めた矢先の解散発表。
高校3年の夏に買ったDVD「LAST DANCE」。
あの頃は、最後のBaby Babyのイントロで毎回わんわん泣いてた。何をどうしても涙が止まらんかった。
弟が隣におるのに号泣しとったもんなぁ。今考えると恥ずかしいわ。
俺にとってブランキーが唯一なのは、ひとつの世界観を表現しようとする3人が、ところがどっこい3者3様のスタイルを持っているところだと思う。
それが楽曲にもキャラクターにもライブにも現れていて、いつ誰を見てもおもしろい、そういう(本人たちにしたら心外だろうけど)、複雑な要素で構成された、単純な世界観だった。
無粋を承知でアルバムに一言ずつ
どっかの音楽雑誌がやりそうな企画ですが、自分の気持ちの整理のために敢えて書いてみる。
特に俺の口からロックを語るつもりもないので、アルバム全体のイメージと、好きな曲を書ければいいかな。
Red Guitar and The Truth
自分的にはこのアルバムだけ世界観がちょっと違うなぁと思う。めちゃめちゃ肩に力が入ってるというか。モノクロなイメージを持ってる。
ブランキーの楽曲が街の中の出来事ってのは周知の話だけど、このアルバムだけはそうじゃなくて、プロローグって感じ。まだ街っていう構想が無かったのかな。
メンバー公認だけど、やっぱミックスがね…。Last Dance1曲目のCAT WAS DEADが凄まじいので、このテンションで他の曲も聴いてみたかったなぁ。
2000年フジでやった”胸がこわれそう”は笑えるくらいかっこよくてブチ切れそう。
Bang!
大当たりの土屋プロデュース。特に8ビートのソリッド感がちゃんと出て、ブランキーっぽくなったと思う。
ロックで迫力を出すなら歪ませて爆音!にすればいいところ、楽曲の繊細である意味綺麗なな部分も汲み取って、ちゃんと音にしてる感じ。土屋さんにはそういうところが最初から見えていたんだろうなぁと思う。
このアルバムで特筆したいのが歌詞。”RAIN DOG”や”絶望という名の地下鉄”は情景がリアルに想像してしまうし、”冬のセーター”ではおばあさんが編んでくれたセーターをあんな退廃的な感情に結び付けてしまう世界観にぶったまげた。本当に天才詩人だと思った。
C.B.Jim
一番聴いたアルバムはこれかなぁ。土屋プロデュースの効果が、前作を経て一気に花開いた感じ。
後期に比べるとまだレコーディング慣れしていない感じが出てるけど、ヒリつくような世界観に合ってる気がする。特に照ちゃんのガリガリのベースライン。廃墟とか荒野っていうイメージがアルバム通して浮かんでくるけど、歌詞もそんな感じ。
この世で一番好きなベースラインは、”3104丁目のダンスホール”。”彼女は死んだ”や”DERRINGER”にも通じる、ひとつのリフだけで一曲通してしまう男気。ひとつのリフにここまでストーリーを込めるベーシストは多分世界でこの人だけ。あと達也がバンドスコアのセルフライナーで言ってた「YOSHIKIを超えた」に笑った。
全曲大好きだけど、特に”RED RUM”のソングライティングは神がかり的だと思う。真似できん。
Metal Moon
上級者向け。
楽曲はストーリー描写というより文学性がぐぐっと高められている印象。その代わりアレンジのまとまりにちょっと欠けるかなぁ。探り探りレコーディングした感が出てるような。分かりやすさは薄いかも。
“Sweet Milk Shake”の歌詞が最高。街で起こったドタバタを詩にしただけなのに何でこんなにかっこいいん。口から言葉が滑り落ちるようにハマってる。この曲は武道館のライブ映像がいい。
達也がBS放送のインタビューで「自分のアルバムで鳥肌立つ」って言ってたのが印象的。
幸せの鐘が鳴り響き僕はただ悲しいふりをする
前作ほどじゃないけど、わりと上級者向け感が。
ライブであんまりやらないから馴染みは薄いかもだけど、改めて聴くとスルメ的魅力がじわじわくるアルバム。
“嘆きの白”ではまさかのTower of Power Hornsの採用。まさにバブル。
“螺旋階段”のベースラインは、本当に螺旋階段って感じするよねぇ。
SKUNK
一転してシンプル志向。このアルバムで特筆すべきは音。全員の音がめちゃくちゃ好き。特にスネアのキレがやばい。ベースはEB-3かな?ミディアムテンポの曲が多いこのアルバムにぴったりだと思う。サウンドだけでも世界観が出来てしまってる感じ。
“Dynamite Pussy Cats”のギターソロ明けAメロ4小節のドラミングは、達也のレコーディングフレーズの中で一番好き。
“Fringe”の最後のギターソロはフレーズが本当に綺麗。
中でも”Hell Inn”は本当に好きなんだよねぇ。作曲が神掛かってる。世界中でマジでこの人達にしか作れない楽曲だと思う。
Love Flash Fever
やっぱいつ聞いても”Pudding”のドラムイントロはキレキレ。ミッシェルのGet Up Lucyと並ぶ名フレーズだと思う。
ただアルバムとしては、セルフプロデュースってことでアレンジがすごく単純になった。あとトラックごとに音が違って、あんまりアルバム通して聴いたことは無いかも…。
“皆殺しのトランペット”の朗読とか、照ちゃんが歌ったりと今までの作風に無い野心作も多いけど、やっぱりイレギュラー感が出てしまってるなぁと。
最後の”ガソリンの揺れ方”でなんだか救われる気持ちになる。
ロメオの心臓
照ちゃんが映画のサントラみたいって言ってた。確かに。
これ一曲でアルバムを語ってしまえるていうくらいの大傑作があるわけじゃないけど、全曲がいい曲。だからアルバム通してすごい聴きやすい。あとギターの音が一番好き。
後期のブランキーは緊張感が無くなったって言う人がいるけど、こういう肩の力が抜けた雰囲気も好き。
高校の友人が屋上でウッドベースで”彼女は死んだ”を弾いてるのを見て、ウッドベースを弾くのを決意した思い出が。
何と言っても”幸せな人”が俺にとってのNo.1バラード。フジロックで演ったこの曲はもし現地で見てたら確実に泣いてた。
“シェリル”は入れて欲しかったなぁ。
Herlem Jets
難しいことは置いといて、その時思いついた曲を野性的にレコーディングしました、という感じ。
リラックスするために沖縄レコーディングしたって言う話だけど、リラックスしすぎやろ!とも思う。Love Flash Feverと同じで、曲ごとにサウンドがバラバラなのが気になるんだよねぇ。いい曲多いのに。あとギターソロの適当さが際立ってるなぁ。
“Salinger”を聴いて、すぐライ麦畑に捕まえてを読み始めた高校時代。”Sea Side Jet City”のギターリフは未だに弾けない。かっこいいのに…
一番好きなのは”DERRINGER”。この曲のPVは人生で一番見たわ。ライブ版もいいけど、レコーディング版がやばい。あの歪ませたウッドベースの音が本当にたまらん。高校時代に狂ったように聴いてた曲。
このアルバム発売直後のロッキンオンのインタビューの達也は、なんか泣ける。
とまぁ、こんな感じ。
VANISHING POINT
解散して13年経った今でも、一度もライブに行けなかったことを悔やんでいる。自分にとってのブランキー体験は、ラジカセかテレビを介してだけだった。
今週末、渋谷でブランキストと一緒にドキュメンタリーを見れたら、そのわだかまりがちょっとはとける…かも。泣くかもしれない。
実は2000年フジロックのアンコールで演ったBaby Babyが見れることをかなり期待している。相当期待している。
CONVERSATION