文字通りのことをします。対象はライブ版ではなくスタジオ版(Earfood)です。譜面とTAB譜は別の記事に書きましたのでそれを前提とします。
以下、付け焼き刃の理論知識で書きますので、誤りがあればご指摘ください。
キーとコード進行
キーはAbメジャー。コード進行と度数はこうなります。
7小節目まではダイアトニックコード。ノンダイアトニックコードなのは最後のF7だけです。セッション定番曲として選ばれる理由はこのシンプルさにあると思われます。
最後のF7について
F7(VI7)は冒頭のIIm7に対するドミナントモーションにあたり、つまりセカンダリードミナントコードです。
ここだけキーがBbに部分転調していると解釈できるようなのですが、理論に疎い私にとってはややこしいので、「最後の一小節だけ特殊な音使いが求められる」くらいに捉えておきます。
以上の前提を以て、テーマとソロ部のアナライズをしてみます。
テーマ部のアナライズ
テーマの大部分がFマイナーペンタトニックで説明がつきます。以下で言うピンク色の音が該当します。
平行調であるAbメジャーペンタでもいいのですが、ロイのソロがFの音を強調して演奏されているためFマイナーペンタと解釈しました。他のブログやYouTubeでも同様の解釈があげられており安心しました。
おしゃれです。私が「マイナーペンタで何か弾け」と言われてもこうはなりません。
- フレーズの始まりと終わりが♭3度の音
- 4度の音がけっこう使われていて浮遊感がある
といった特徴は、マイナーペンタの音使いとして学びがあります。
さてベースの指板では、ハイポジションのFマイナーペンタのうち以下の音を使います。
最後の2小節はどうでしょうか。
AbM7上で使われているGはコードドーン(長7度)でもありますが、ここではFマイナーペンタの文脈上で解釈する方が自然なので、フレーズを綺麗に繋げるためにFマイナーペンタに長2度を足しました、と捉えます。Fエオリアンで解釈してもいい気がします。
最後のGbは何なんでしょう。F7における短2度ですが、コードトーンでもFマイナーペンタ上の音でもありません。
冒頭でこのF7はセカンダリードミナントコードだと言いました。ここで使えるスケールは色々あるらしいのですが
- F オルタード
- F Hmp5↓(ハーモニックマイナーパーフェクトフィフスビロウ)
- F ミクソリディアン♭9th, ♭13th
- 他にも?
上記3つのスケールで共通しているのが短2度の音です。この音を採用していると考えます。
ブリッジ部のアナライズ
続いてブリッジ部です。ここでの繰り返しフレーズでもほとんどがFマイナーペンタで構成されています。
が、テーマ部とは異なり♭Dの音が登場します。この音はFマイナーペンタ上の音ではありませんが、Fエオリアンの♭6度の音を拝借していると解釈します。
3小節目のEナチュラルはもFマイナーペンタ上の音ではありません。これは♭E(♭7)への経過音でしょう。譜面ではP.N.(Passing Note)と記載しました。
この繰り返しフレーズはミドルポジションのFマイナーペンタの指板図で動くと弾きやすいです。
さて最後の2小節は、テーマ部と同じく、やや特殊な動きをしています。
7小節目
使われているGナチュラルの音はテーマと同じ音使いです。
8小節目
Fマイナーペンタとは異なる解釈をします。これはソロ部も同様です。
使われているDナチュラルは、ここでのコードF7で言う長6度の音です。では、ここで使えそうな各スケールにおいて、6度の音はどうなっているでしょうか。
- F オルタードでは: 短6
- F Hmp5↓では: 短6
- F ミクソリディアン♭9th, ♭13thでは: 短6
うーんこれらのスケールからは説明がつきません。上記以外の、例えばミクソリディアン(♭9含む)上に乗っている、と考えればいいのでしょうか。自信無いので教えてほしいです。
ソロの1コーラス目のアナライズ
いよいよロイのソロ部に入ります。
やはりFマイナーペンタです。ちょっとだけ2度の音が使われています。
ここでのフレーズはベース指板で言うローポジションのFマイナーペンタの形で捉えると理解しやすいでしょう。
テーマ部と同じく、FマイナーペンタでありながらFの音を経過音的に使っているのが、アンニュイな雰囲気の因子として考えられます。
さて問題の8小節目です。
まずフレーズを耳で聞いて明らかに異様な音使いをしている、という印象を受けます。これがかっこいい。
使われている音は、F7における長2度、長3度、短5度、短6度、長6度。これを一発で説明できるスケールが何か、私の知識では判明しませんでした。
ので、自信ありませんがこういう解釈をします。
Fホールトーンに、経過音として長6度の音が加わっていると。
ただ、小節の1音目と、一番長い=一番目立っている音を経過音であると断じている事が自分で腑に落ちていません。
裏コードB7のアプローチで解釈した方がいい気もしますが、自分にはこれだという解釈が見つかりませんでした。誰か助けてください。
ソロの2コーラス目のアナライズ
前半と後半の4小節づつに分けて解説します。
変わらずFマイナーペンタです。これまでで最もオーソドックスなフレーズと言っていいでしょう。
ベースの指板上でも、ロック出身者にも馴染みのある動きとなっています。
次に後半4小節です。
度数の(P)はPassing Noteの略としています。
冒頭3小節ではポイントが2つあります。
- 音数が増え、Fマイナーにおける長2度や短6度の音が多くなりました。さすがにFマイナーペンタと言い切るには無理があろうと、Fエオリアンとして解釈。ジャズっぽさが強まりました。
- ベース指板上を上から下まで大きく動く必要が出てきました。こういう場合、フレーズのかたまりごとにハイ→ミドル→ローとブロックで捉えると追いやすいです。一例を譜面上に記載しました。
最後のF7はこれまでで最も解釈がしやすいです。
度数を記載して眺めたところ、F Hmp5↓スケールと解釈するのが最もシンプルだと思います。短3度の音はスケール外ですが、アクセントだと思う事にします。
なおHmp5↓スケールの解説はこちらの記事から。
ソロの3コーラス目のアナライズ
最後のコーラスは一気にいきます。
冒頭7小節は、Fマイナーペンタと言っても良さそうですが、前のコーラスの勢いが継続していると考え、引き続きFエオリアンという事にしました。
ルートのFの音を強調しすぎない音使いは変わらずです。
今までに出てこなかった高音域が現れています。ベース指板上ではエキストラハイポジション(私が勝手に名付けた)での運指が求められます。
最後のF7は前のコーラスと同じくF Hmp5↓のスケールから音を使っているようです。
なおライブ版でのロイはこのフレーズを多用しています。手癖なんだろうと思われます。
Earhood版のStrasbourg / St. Denisのロイハーグローブの演奏パートのアナライズは以上です。
ベーシスト視点でのまとめ
私がこの曲でソロをとるとした場合、こういうポイントを抑えると良さそうだなと思いました。
- 冒頭7小節はFマイナーペンタトニックを基本とする
- 音数を増やす場合はFエオリアンを使う
- ただしルートのFは経過音的に使う
- 慣れないうちは♭3のA♭を軸にフレーズを組み立てる
- 最後のF7は頭を切り替え、Hmp5↓でフレーズを組み立てる
以上です。
思った以上に労力がかかりましたが、他の曲でもやってみたいと思います。
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