今月読んだ本(2017年1月)

2016年の後半はピクロスをやりすぎて大いに後悔したわけですが、2017年はその時間を英語学習と読書に充てようと決心しましたので、月ごとに読んだ本でも簡単にレビューすることにします。こういうタスクを課さないとすぐ逃げてしまいそうなので戒めの効果を狙っています。果たして1年続くのだろうか。
というかそれよりも、LINEの田端さんがTwitterかブログかで「読書する時間が無いのではない、読書しないから時間が無いのだ」というようなことを仰ってたのに完全に影響されて、「ぜひその境地を味わってみたい」というモチベーションでやってます。

マイルス・デイヴィスの真実


小川隆夫 / 元は2002、文庫版2016

全く理由は分からないが、ふとマイルスのことでも知ろうと思って衝動買い。クインシートループとの共著である「自叙伝」は10年くらい前に読んでました。だいたい忘れてたけど。
あとがきで平野啓一郎さんが言ってる通り、自叙伝との内容を踏まえて本書を読むと、たしかにマイルスのヒストリーが立体的に浮かび上がる構成になっている。
自叙伝では一部マイルス流に誇張されて紹介されるエピソードも、小川さんによる第三者目線で見るとまた趣が異なってくる。小川さんが言う「マイルスが本当はシャイ。いろいろと話しを盛る部分はあるがあれは彼の照れ隠し」という文脈で見ていくと、今まで知らなかったマイルスのキャラクターを感じとれた気がした。

特に印象に残ったのは、マイルスが他のミュージシャン、特に自分とは違うフィールドのミュージシャンに対して常に敬意を向け続けてたところ。その分オールドなジャズマンにはすぐ興味をなくす傾向もあるけど。帝王と呼ばれ時に傲慢さを印象づけられることが多いマイルスだが、さっきの話と合わせて、どちらかというと謙虚な人という印象の方が残る。

あとおもろいのが、各レコードをどういう戦略で吹き込んで行ったかが時系列で追えるところ。どのアルバムで何をやりかったので次はどうしたい、というのが解説されている。いや、これ自叙伝もそうなんだが、今はYouTubeでその場で聴けてしまう。すごい時代になってしまったものだ。
これ読みながら「今ならエレクトリックマイルスが理解できそうな気がする!」という気がしてビッチズブリューを聴きましたが、やっぱりよく分かりませんでした。

生産性―マッキンゼーが組織と人材に求め続けるもの


伊賀泰代 / ダイヤモンド / 2016.11.25

同居人のセンちゃんから、ネット有名人のちきりんとこの人が同一人物だと聞いてびっくりした。まぁ同一人物だから当たり前なのだが、ちきりん氏と同じく、良くも悪くも正論のオンパレード。
叩きつけられる正論にアレルギーを示す人がいるっぽいのだが、俺は正論を聞くのも言うのも結構好きで、現実解を求める際に正論=理論解を知っているのと知ってないのでは意味が異なってくると思うから。
自分の場合だが、理論解と現状の差を正しく認識することで、課題と戦略的なアクションが見つかると思っています。そういう意味では、この本は定期的に読み返してみて、「今ウチの組織がどういう状態にあるか」という定点観測にすると良いと思った。
自分はマネージャーの責務を「部下の成長と組織の成長をリンクさせる」と定義しているのだが、それのアウトプットは「生産性の向上」により測られる、という視点はありそうで無かったので、いいインプットになった。

あと、こういう人はえてしてものごとの性質や傾向を分類して可視化することに長けてるので、そういう視点も参考になった。

なんかあっという間に読んでしまった。紙の場合だと250ページとのこと。Kindleで読むとページという概念が薄れるなぁ。

確率思考の戦略論 USJでも実証された数学マーケティングの力


盛岡毅, 今西聖貴 / 角川書店 / 2016年6月2日 / 194p

俺は仕事中にもよく「左脳で分類し、右脳で決める」とか言っているのだが、それを遥か上のレイヤーで実施してしまっている人のマーケティング本。著者は経営戦略をアートからサイエンスに近づけたいと語っており、その理由を「勝つ確率が上がるから」と「(異なる文脈下でも)再現性が求められるから」としている。俺がごちゃごちゃ言うよりこっちの方がシンプルで、今度俺も使わせてもらおうと思った。

著者の2人はずっとBtoCのビジネスを戦場とされているので、視点が完全にBtoC。自分は完全にBtoBの人なので、この本に書かれていることがそのまま明日から活かせるという環境ではない。それでも、普段付き合いをさせてもらっているクライアントのマーケ担当の方々の責務は、突き詰めれば盛岡さんが描かれてるような経営のための戦略を定義すること、ということがイメージできるようになってよかった。
同時に、我々が頑張っているウェブマーケティングなんぞこういうレベルの人から見たら、「膨大にある戦略オプションをブレークダウンしまくった後のたかが一粒」というスケール感も目の当たりにして、如何に自分のやってることがクライアントの企業経営の中でちっぽけなものかを思い知ることにもなった。もっと頑張らなあかん。

一応国公立理系院卒なので、数式は拒絶反応があるどころかむしろ好物だったりするが、巻末の需要予測モデルなどの数式は俺の知的好奇心の範囲を簡単に超える難度で、あっさりギブアップ。ただこういう世界にハマると熱中してしまうのも分かる。俺もたまに京大の入試数学解いてしまいたい衝動に駆られるもんなぁ。

特に著者一人目の盛岡さんはとにかく文章がポジティブ。ジャズベーシストの納浩一さんと全く同じ文章スタイル(ほとんどの人分からんと思うが)。会ったことはもちろん無いが、たぶんめちゃんこいいおじさんだと思って読んでいた。NHKのプロフェッショナルに出たことがあるらしいので、今度それみてみよう。
そういうキャラもあって、巻末で展開される彼なりの組織論には心打たれた。ちょうど俺も今会社の組織についていろいろ考えがぐるんぐるんしているので、彼の「まだ見ぬ誰かをアテにしないで、今いる戦力で価値を最大化するのだ」的なメッセージは非常に示唆的だった。

この著書の目的である、この国に数学マーケターを増やすというビジョンを実行するには俺の領域は異なるが、少しでも彼の意思を自分の仕事に活かすにはどうしたらいいか、考えるのはおもしろそうだ。

結論

自分の書評スキルの低さに呆れる。ちょっと他の人研究しよ。