他のエフェクターと一線を画すコンセプトという事で一斉を風靡したらしいペダルエフェクターです。入手して10年以上経ち、今まで何となく使ってきましたが、ここで言語化して紹介します。
目次
コンセプトと評判
公式の説明は以下の通りです。プリアンプ、コンプレッサー、ブースターの機能を包含している事が示唆されています。
プリアンプ的にダイナミクスをコントロールするもよし、コンプレッサー的にナチュラルに音をまとめるもよし、レンジブースターとして絶妙に立ち位置を前後させたり拡がりや密度に変化を持たせるもよし、へたっているアンプに元気を与えるもよし。
EFFECTORNICS ENGINEERING OFFICIAL WEB SITE ActiveSpice
さて我々はベースの音作りをする際、例えば以下のような行動をとります。
[目的] 音をヌケさせたい
[手段] イコライザーでハイミドルを上げる
[結果] 音像がハッキリして、結果として音ヌケが良くなる
一方このエフェクターは、乱暴にいえばこういう体験を目的としています。
[目的] 音をヌケさせたい
[手段] 「音ヌケ」ツマミを上げる
[結果] 当然、音がヌケる
ベースの出音の「こうしたい」という願望をそのままツマミにしました、という感じです。
一般的なイコライザーやコンプレッサーのツマミは、「XXHzをYYdb上げる」といった風に物理的に何をしているのかが説明されますが、ActiveSpiceのツマミはそれぞれが何をどうしているのか説明されていません。
その事は、他の方のブログでの「音は良くなるんだけど、詳しくはよく分からん」という感想にも現れています。
非常に曖昧というかそれぞれ何かが明確に可変してはいるのだけど微妙に相互作用している感じもするし捉え所がない。良い音になるんだけど。
HaTeNa? Active Spiceを高橋いさみ君より譲り受けた話。 – 「趣味はドライヴ(歪ませる方)です。」
なんと説明したらよいか、何が変わったか良く分からんが、確実にベースっぽいサウンドになる、というようなエフェクターなんで、ちょっとその価値に気がつけない人や、他機種との併用性を吟味したときに、これを使う必然性が感じられない人には、勧められません。ただ、「基本はエフェクターとか使いたくないけど、1つ位、音質改善装置を持っておきたい」という人にはお勧めです。
hatena? Active Spice 2009 LIMITED : 岡 正幸 official blog ~挫折したギタリストでいいじゃない~
良いなと思うセッティングを見つけるのが大変です。つまり、セッティングが非常に難しいエフェクターだとつくづく思います。左端はボリュームですが、残る3つのノブは効きが非常に微妙で複雑な味わいですから、捕らえどころがないんです。
Active Spiceというエフェクター – CYCODELIC WEBLOG
それぞれのツマミの効果
説明書では以下のように説明がされています。
Volume: 本機から出た信号を次のエフェクターやアンプ等に送り出す音量を調整します。
ActiveSpice取扱説明書より
Sensitivity: 入力感度です。右に回すほど感度が上がり、Gainで設定したレベルと相対的に音圧などがパワーアップします。感度が上がるとアナログ独特の温かみのある中域のふくよかさを増加させることができます。
Gain: 音ヌケやブライトさを調整します。右に回すほど音ヌケが良くなっていきます。
Color: サウンド全体のコンプレッション感を調整します。左に回すほどコンプレッション感が増します。
Volumeは説明不要として、問題は他の3つです。一度でもこのエフェクターを使った事がある方は「SensitivityとGainのことがよくわからん」と言うでしょう。
私はこう解釈しています。
Sensitivity: 右に回すほどなんか「元気感」が上がり、音量も増す。
Gain: 変化がほぼ有りません。私が完全に死んだ弦(10年以上)の楽器で試しているからかもしれません。
Color: 説明の通り左に回すほどコンプ感が増しますが、眠たい印象の音になります。
自分の使い方
このエフェクター、ハマったらほんっとに迷子になります。のでリハや本番の現場で細かい調整はしない方がいいと思います。自分の場合はほぼColorしかいじらないようにしています。
- 楽器本体のトーンツマミはフルテン固定
- ActiveSpiceでは Sensitivityツマミを高め & Gainツマミを真ん中 を常時固定にして、まずそれなりに元気めの音が出るようにしておいて
- アンプの出音に対して「ゴリッとしたいかモコっとしたいか」で Colorツマミを調整する
こんな運用です。
アクティブベースに対して
アクティブベース、パッシブベースの切り替えスイッチがあります。
アクティブベースの場合はLに、パッシブの場合はHにスイッチを寄せます。アクティブベースの高出力信号をLowにGainする=Lという事だと思います。私は勘違いで逆にしていました。
自分が所持するYAMAHA TRB-JP2は出力が強すぎるのかもしれませんが、アクティブモードで使うとどうしても歪んでしまいます。そのためこのエフェクターを使うときはパッシブモードにしています。なんか最適解な感じは全然しないんですけど。
シリアルナンバー
買って10年以上経って初めてフタを開ける事で、初めてシリアルナンバーが記載されている事を知りました。
特に縁起のいい数字ではありませんでした。
工房の紹介
円広志のYouTubeチャンネルに取材動画がありました。
製作者の哲学が知れてとてもおもしろいです。
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