Kazuki Yamanaka Quartet Tour 2016 FINAL@お茶の水NARUに行ってきた

山中一毅がオリジナルの曲ばっかりやるツアーをやっているということで、そのファイナルに行ってきました。お茶の水のNARUという場所で、私は始めて行ったのですが、他のスケジュールを見ると日本の大御所がいろいろと出演されているあたり、由緒正しきジャズバーのようです。

山中のオリジナルの楽曲と言えば、ちょうど1年前のCD発売にあわせて公開したウェブサイトを制作させてもらったのですが、私、バンドやミュージシャンのウェブサイトを制作するときは延々とその人のCDを流し続けるというのを信条にしてますため、恐らく日本で一番山中のCDを聴いた人間だと思います。

去年行った山中のライブはスタンダードを中心にやるというコンセプトだったのでオリジナルは聴けませんでしたが、いよいよ聴ける時が来たか。ということで念の為に家を出る前にCDを3周聞いておきました。たぶん全ての曲の構成やソロもかなり頭に入っていると思います。さてこれらがライブでどうなることやら。

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白熱する演奏中の山中です。すごい表情です。

演奏そのものについては俺がどうのこうの言えるレベルを8周くらい超えているのですが、さすがツアーを回っただけあって、かなり阿吽の呼吸という感じのバンドサウンドでした!バックの3人が、山中のオリジナル曲がもつ世界観をよく理解されているように見えます。4つの楽器で一つの音を出している、そういう感覚でした。誰目線でモノを言っているのかよくわかりませんが。

前見た時はドラムが西村匠平さんだったのですが、今回は桃井裕範さんという方でした。このドラマーの変化が、バンドサウンドに大きな変化をもたらしていたと思います。
西村さんがけっこうアグレッシブにバンドを煽るタイプなのですが、今回の桃井さんは出すとこ出す、引くとこ引くのバランスはあるのですが、どちらかと言えば控えめ。この結果、大塚義将さんのベースがかなりフロントに近いポジションに聞こえるサウンドになっていて、山中のプレイとベースが会話しているようなタイミングが多くありました。

何の意味があるのか分かりませんが、私が抱いた各楽器のポジションを図にしてみました。

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まぁ分かってくれないかもしれませんが、私にはこういう立体感でサウンドが聞こえた、ということです。

アルバムSongs Unconscious-mindedのレコーディング時のサウンドには、こういうスタイルの方が近いかもしれません。

で、山中のオリジナル曲ですが、やはりツアーを回ってきたからか、このメンバー独自の解釈なのか、また別のアレンジとして昇華されていることに驚愕しました。CDに比べてより楽曲の自由度が増しているというか、乱暴に言えば、楽曲というフォーマットを崩すか崩さないかのギリギリのラインで各メンバーが好き放題やってる、という感じでした。山中は、CDで一回作った「曲であること境界」があやふやになった空間で、またいろいろな表現手法を模索し楽しんでいるように見えました。同じ曲でもメンバーが変わると全然別の世界になるというジャズというジャンルが持つ醍醐味を味わえた気がします。

あと、これは毎度言っているような気がしますが、大塚さんが相変わらずスペシャルでした。俺にとってのベース神です。2年前に見た時よりもビート感がさらに強調されていて、それでいて指板の上を泳いでいるかのような雄弁なベースプレイ。何の曲か忘れたけど、モーダルな進行の曲が彼のベースラインによってモーダルになりきらない、かなり(いい意味で)曖昧な世界観が構築されていて、「どうなっとるんじゃこりゃ」と度肝を抜かされました。ソロもめちゃくちゃかっこいい。ハイポジションをこの人ほどいいピッチで弾けるひとはYouTubeにもそうそう居ない気がします。
今回はあまりに感極まってライブ後にレッスンの相談をしてしまいました。

あと、髪型が山中とほとんど同じでした。

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後半には名古屋のミュージシャン(ギターとテナー)がシットインしてのシクステット編成に。やっぱりどうしても「4人と2人」という感じには聞こえてしまうものの、リハなしのいきなりステージで世界観にフィットしにいけるスキルはやっぱりさすがすぎました。俺には無理。

ということで、3セットも全く長くないと感じる、山中の素晴らしいライブでした。
ただ曲を作ってライブする、じゃなく、山中らしい独自の世界観を構築して、それを表現としてプロデュースしている様、流石だなと思いました。俺自身は鼻くそアマチュアミュージシャンですが、ただのテクニックの集合としてのバンドではなく、バンドサウンドや世界観を意識して演奏するようになったのは、間違いなく奴の影響からです。

8月とか9月にまた渡米するそうで、寂しい限りです。