とあるUX屋の転職活動ふりかえり2019-2020

2週間以内

人生2回目となる転職をします。2020年4月から新しい会社です。ドキドキです。
しかし3月中旬現在、コロナウィルスの影響による自宅軟禁のせいで、PCの返却や書類提出などの物理プロセスが全く進捗していません。本当に俺は退職できるのでしょうか。

世間はワニの話題で持ちきりですねぇ。一方で自分が「#10日後に転職するワシ」状態である事に気付いたと途端、何だか転機のような気がして来ました。このサイトでは意識高い事を書くのを禁止していましたが、期間限定でそれを許可し、自分の経験知を文章化してみようと思いました。たまにはいいはずです。

第1稿は「転職活動そのものの振り返り」をします。シリーズ化するかはまだ謎。

世間的には退職エントリーと呼ばれる部類のはずですが、3年後に自分が「あの頃はこう考えてたなぁ」と懐かしむために書いているものであり、他人が見ても何の得も無い気がします。

転職活動の背景や経緯

そんなにあっさりした転職活動ではありませんでした。

今の会社

デジタルエージェンシー(と言う呼称は使いたく無いのだけど)で、エクスペリエンスデザイン系プロジェクトに従事。バリバリの受託。キャンペーン・PR系のプロジェクトはやらず、デジタルプラットフォームのコンセプト・設計・実施が土俵。

  • アカウントタスク : クライアントからの相談受け・チーム組成・予算管理・プロジェクト設計・プロジェクトマネジメントなど
  • 実施タスク : 調査・分析・ワークショップ・戦略・設計・デザイン・開発など

を両方やるポジション。もちろん一人じゃなくてチームで。
両方やる人間って周りにそんなにいなかったけど、自分がやってて楽しい事を続けてたら知らずにこうなっていただけで、特にキャリア戦略があったというわけでもない。

なお親会社に営業専門の部隊がいるので、ドアノック的な営業をやる人間ではなかった。というわけで生粋のアカウントというわけではない。
なんだが、何かクライアントと仲良くなる機会が多かったので、1度関係値ができると後は直接相談を受けるというケースは結構多かった。もちろん親会社に断りを入れてだけど。

やってきたプロジェクトで主なものはこんな感じ。

  • 数百万ユーザー規模の会員向けモバイルアプリのコンセプト・設計・開発 / 3年
  • 100万ユーザー規模の会員向けモバイルアプリのコンセプト・設計・開発 / 2.5年
  • 月間数百万PV規模のtoCウェブサイトのグロースマネジメント
  • 数千人企業のグループウェアのコンセプト・設計・開発
  • 数千人企業の内部BIツールの設計・UI
  • 数千ページ数規模の会員獲得ウェブサイトの設計・開発

特にここ3,4年は、様々な会社の仲間たちとどこにも自慢できると思えるチームが組めてかなりハッピーだった。誰にも負けないと自分たちで思える実績も残せた。自分は本当に運がいいと思う。

在籍期間は8年。プロデューサーで予算やスタッフィングを学んでから、次にIA(情報設計者)専門のチームを作り、最後はUX屋さんに。
時間・人・予算・着地工程と、プロジェクトの構成要素を一通り体験知として積めたのは良かった。そういう事やりたければ勝手にやっていいというポジション選択の自由度がこの会社の最高の醍醐味だったように思う。とある官公庁ウェブサイトのアクセシビリティのガイドラインを一人で作る、みたいなプロジェクトもやったりしたもんなぁ。

そんなノリだったので自分の肩書には困った。最後は「UXストラテジスト」と名乗っていたが、全然しっくり来ていない。というか自分は、「肩書を特定しない方が縦横無尽に動けるしプロジェクトを選べるし楽だわー」という考えの持ち主である。

エージェンシーと名乗りたくないのはいわゆる代理店と見られたくないからです。
代理店って予算だけ持ってきて「あとよろ〜」でしょ、と見られてるのも知ってるし(まぁ事実としてそういう人は一定数いるんだが)、一方で自分はこの手でユーザーに届くものを設計しているという自負が強烈にあるので、一緒にしないでネという気持ちの表れ。あと海外のメディアを読んでるとAd Agencyって時代遅れの象徴みたいな扱いになってるような気がする。

次の会社

外資のコンサル。で、同じくエクスペリエンスデザイン系のプロジェクトをやる予定。ちゃんとものづくりをする環境に惹かれて転職するので、コンサルと聞いて一般的に想像されるイメージとはやる事が違う。はず。

この手の話はコンサルという言葉を業態として言うのか、企業として言うのか、はたまた職種として言うのかで意味の差が広がっていると思うが、もちろん厳密には入ってみないと分からない。

転職活動をはじめたきっかけ

エージェントの方から声がかかったので。確かLinkedInだった気がする。

最初に頂いたメッセージで「自分の得意領域を把握されていた」のと「具体的な社名とポジションが明記されていた」、この2点が他のメッセージと一線を画していたので、いっちょ会ってみようかと思った。今思えばオファー内容というよりもこの人への興味が大きかった気がする。

会ったらすごくおもしろい人だった。主マーケットはコンサルらしいけど、コンサルと言っても近年はデザイン文脈も話せないと価値が出ないという事ですごく勉強している。そういう真摯な所に惹かれた。話をしている内に「じゃ数社受けてみましょう」という事に。

前回の転職も、先輩から「ウチ受けてみたら」と言われて動いているので、基本的に自主性が薄い。

タイムライン

結構苦労した方だと思う。

  • 6月 エージェントの方から声がかかり、面会する
  • 7月 どーしよっかなーとぼーっと考える
  • 8月 どうします?とリマインドが来て、慌てて何社か受け始める
  • 9月 数社の面接。一部は落ちる
  • 10月 最終面接
  • 11月 先方のグローバル事情で採用活動が一時停止。ひたすら待つ。この間にもう1社受けてみる
  • 12月 内定

とにかく長かった。特に10月は気持ちが浮き沈みして結構しんどかった覚えがある。

1年前に同じ会社に転職してった知人は直でエントリーして一発内定だったと聞いたが、それと似たテンションをイメージしていたら痛い目にあった。実力が足りてないからなのか世渡りが下手だからなのか、これも入ってみたら分かるだろう。まぁ世渡りも実力のうちだとも思うけども。

転職を決めた理由

大きく言うと3点。

  1. 自分の主戦場のフィールドが広がる環境がある。プロジェクト視点でもチーム視点でも。
  2. もちろん、ブランドと年収のアップ。人間だもの。
  3. 今と違う組織ロジックを経験したい。

1と2は当たり前すぎるので省く。

歳をとるにつれてプロジェクトの成功よりも組織の成功を意識するようになるにあたり、次第に議題が人事制度・マネジメントロジック・カルチャーといった領域になってきた。「絶対こうした方が良いはず」という考えを強く持つ一方で、「他の会社はどうなっとるんだろう」という興味も同時に強くなってくる。

当然、今の会社でマネジメント職をやって成功体験を作るというキャリアが先にあるべきだが、というか今期にその話があったのだが、たまたま転職が決まるタイミングと被ってしまったため、別の組織で新しい体験をする事に決めた。
この決定は「体験知を増やす」興味がやたら強い自分の習性に依るところが大きい。エージェンシーという立場なのでとにかく取引がある会社がやたら多いメリットを活用していろんな組織の人に話を聞いたが、最後は「話を聞くより自分で体験してナンボ」というのが結論だったという事になる。

ちなみに、今の会社の制度やカルチャーが嫌で嫌で…という考えは全く無い。これは自分でびっくりした。2年前くらいまでは本気でロクでもない会社だなと思っていたし、退職しますと伝えた事もあった。が、色々あって現在は会社をひとつひとつ良くする事に結構やりがいも感じてはいた。最終的には、天秤はまぁまぁ釣り合った状態の意思決定だった。

転職活動で良かったこと

前置きが長くなりすぎた。8年ぶりの転職活動に体当たりして感じた良いこと/悪いことを残します。本当はこれが本題だった。まずは良かった事から。

自分年表を作っておく

月単位で「プロジェクトごとのステータス」と「その月のトピック」を書き残しておくと便利。数年やってると年表になる。


こういう感じ。

メリットは

  • 時間感覚がすぐ分かる。例えば「あの部に異動したの4年前か」とか「あのプロジェクトって30ヶ月かかったのか」みたいな事。
  • 何かのアピールポイントのエビデンスが見つけやすい。

自分はこれを6,7年くらいずっと運用していて、ケイパビリティを整理するのにめちゃめちゃ便利だった。ただこの年表、転職のために作ったのではなく趣味でメンテしているものであり、一般的な感覚では気持ち悪いかもしれない。

プロフィールのスライドも作っておく

上と似たような話で、自己紹介スライドをメンテするという趣味がもともとあり、いざ就活するとなった時に「すでに型が出来ている」状態だった。面接準備の初速が高まる。

パワポのフォーマットを作るという事ではなく、定期的に自分を客観視して文章化しておくという事は就活だけじゃなくて仕事にも活きるはず。マジで仕事人間なのかもしれない。

LinkedInやWantedlyはまじめに書いておく

まさか自分がSNSきっかけで転職するとは思ってなかったのだけど、ちゃんと書いてれば価値観の合う相手から声がかかるもんだなぁと今回気付いた。

海外のデザイン会社とプロジェクトをする機会に恵まれたのが大きかった。彼らとSNSで繋がるというとFacebookじゃなくてLinkedInがメインになる。で、彼らのLinkedInのプロフ欄のガチ度がすごいので、それ見てるとこっちも頑張ってみようという気になる。

エージェント経由で良かった

受ける会社の内部事情が聞けたのが大きかった。マネージャーはどんなタイプとか、チームの雰囲気がどうだとか。自分の場合は特に、とある企業で複数の部門が選択肢にある状態だったのでかなり意思決定に影響した。
リファラル推しの人もいると思うけど、自分はこっちのメリットの方が大きかったように感じる。

苦労した事や反省点

逆にネガティブな事です。こっちの方が多い。

夏の転職活動はオススメできない

暑いから、ではなく、夏のあらゆるイベントに行く気がしなくなるから。
転職活動中は全ての土日がレジェメのアップデートや対策で頭がいっぱいになる。自分がナイーブになり過ぎていたという気がしないでもないが、ともあれレッチリが来たサマソニを断念した後悔はもう経験したくない。

年始か春に活動しはじめて初夏に決まる、あるいは、秋か冬に開始して年末か年始に決まる、あたりがちょうどいい気がする。

プロデューサーやPMスキルは歓迎されない

冒頭はこれでかなり苦労した。
かなり極端に言うと、UXやるならUXデザインの専門スキルだけが重要視されるわけで、他の事は全然アピールポイントにならなかった。
ここで言う「他の事」というのは、政治活動ができるとかプロジェクトリスクヘッジに動けるとかお金の管理ができるとかクライアントの意思決定をコントロールできる、みたいな部分で、自分の場合はUXデザインの実績に加えてこういう部分もアピールしてみたが、却って専門性が薄れた印象を持たれたようだった。他のUXデザイナーとの差別化になるかなぁと思ったけど逆効果だった。

こうなる理由ははっきりしていて、受けていた会社が、今いる会社よりも職能がバキバキに分かれているから。外資はだいたいそうらしい。
「リサーチが一通りできます」とか「プロトタイピングで役員の承諾とりました」とか「こういう思想で設計できます」みたいな、いわゆるUXデザイナーと聞いて想像するスキルに集中して説明した方が良さげ。

とある会社の選考で、仮想プロジェクトのプレゼン課題があった。あまりにジェネラルなプレゼンをしてしまい、プレゼン終わった後に「…という感じなんですけど、多分これ、セールスがやる事とUXデザイナーがやる事の両方やっちゃってますよね?」と聞いたら「そうですね笑」と言われた。

という事で、外注に頼りまくりなエージェンシー業界は注意が必要。

もっとも、「コンサルのクリエーティブ部門」に行くからそうなるわけで、職能としてのコンサル行くなら政治とかお金の管理経験は必要な気がする。

もう一言加えておくと、例え内勤クリエーティブであっても政治やお金に強い事はプロジェクト実現に必須なスキルだと自分は思ってるが、その考えが次の会社で通用するのかどうかは入ってみて勉強する範囲。

メタ視点すぎないように

一言で本質を突く、みたいな会話は面接では必要無い。これも結構悩んだ。

インタビュー対策で家でうーんうーんと考えていると、想定されるあらゆる質問に「一言で全て言い切る答えを用意する」みたいな発想になってしまった。理系脳が炸裂したのである。相手がコンサルだからと気負いすぎたフシもある。

メタ論法の比喩で「顧客が欲しいのはドリルではなく穴」とはよく言われるが、これが行き過ぎて、極端に言えば何を問われても「地球に平和をもたらすため」みたいなレベルの回答を用意してしまったに近い。さすがに例がアホすぎるが現実はもうちょいちゃんとしている。

これをやってしまうと、インタビューで相手から深堀り質問が来た時の返事に困る。「さきほどお伝えした通り…」を連発したりとか「これ以上の理由を述べるのは難しい」みたいな回答をするハメになってしまった。

普段プロジェクトでクライアントと話す時はトントンと会話できているはずが、今思えば周りが見えなくなっていた。何事もちょうどいいのがいい。ちょうどいいと言うか、「こういうプロジェクトがしたい」とか「Cクラスと仕事したい」くらいのストレートさでいいのである。多分。

得意なタイプと苦手なタイプが極端

キッパリと高評価と低評価が分かれた。複数の部門を受けたとある企業では、「ぜひ来て欲しい」と「カルチャーが合わない」という評価を交互にもらって混乱した事がある。

良く言えば自分のキャラクターがハッキリしていたとも捉えられるが、ビジネスの現場でそのクセは何のメリットも無いので是正する必要がある。

これの原因は断定できないのだが、上で書いた「メタ視点で回答してしまう」ところにある気がする。
人生観みたいな相手を選ぶレイヤーで話をするより、その手前のビジネス観レイヤーで相手と話した方が企業マッチングという意味ではブレが少ないはずだ。

事業開発やりたいなら小規模でも経験しておく

いくつか受けた会社のうちの一つが、エクスペリエンスデザイン×事業開発を専門でやるところだった。1次面接を受けて30分でお祈りメールが来た。

理由は「事業開発の経験が無いから」とのこと。そらそーだわなー。納得性が高い。
今の会社で事業開発プロジェクトをやる機会は皆無に等しいので、その会社を受けたいならそもそも今いる会社が間違っているという事になる。将来それなりの規模で事業開発やるなら、受託ひとすじでキャリア組むのではなく、若い内に事業会社に行っとかないと無理ゲーだと思われる。

自分は事業開発には全然拘って無かったからすっぱり諦められた。と書くと負け惜しみに見えるかしら?

マネージャー職は経験すべきか

これはちょっと答えが出ない。
自分はこういう部分も中途半端で、「部員のスキル育成は見てるけどマネージャーではない」というポジションで、それくらいだとマネージャー経験は無い、と判断される。まぁ当たり前だが。

受けた会社の一部では「部員の給料を決める経験は?」という事も聞かれたが、これを今の会社でやろうとすると役員になるしかないので、なかなか難しい問いだ。日系企業だと無理ゲーなのでは。

次に外資を考えていて、マネージャー採用を狙うならやはりマネージャー経験は無いと厳しいが、自分は年齢的にはギリ「現場でバリバリ」でも通用すると思っているので、マネージャーには拘らなかった。

まとめると

  • 転職します。
  • 外注慣れのエージェンシーからコンサル行くのは結構苦労するかも
  • 面接ではストレートに

あと転職エントリーとして、UXデザイン、情報設計、マネージャーの役割、受託ビジネスについて等を書こうと思っています。気力が続けばですが。