PS傑作RPG、クロノクロスの感想

プレイしたのが3年くらい前なので、うんうん思い出しながらレビューというか感想みたいなのを書いてみます。

自分にとってはSFC「天地創造」に次ぐ、人生ベスト2のRPGです。感想としては「おもしろかった」というよりも「いい話だった」が近いです。その読後感も天地創造と同じ。

両作品に共通するストーリー上の特徴なんですが、RPGよろしく「世界を救おうぜ」という大義名分に従い話のスケールがうなぎ上っていくことと並行して、ボーイミーツガール的展開がミックスされていったり、エンディングで主人公とヒロインが離れ離れになってしまうところとか、そんなあたりがざっくり似てます。で、自分はそういう「煮え切らない話」が好きだったりします。理由はRPGが終わっても頭の中でアレコレ考えてしまう状態が気持ちいいからだと思います。ドラクエ4も同じ理由で好きです。もちろん、そういう話に納得できないと言う人がいるのも理解はしているんですが。

そして両作品とも、何より音楽が本当に素晴らしいです。RPG音楽史上の金字塔と言ってもいいです。単に聴いてて「いい曲が多いなー」という以上に、「作品が持つ世界観とドラマに合わせて音楽が創られている」ことにに心から感動します。楽曲の質もそうなんですが、「RPG音楽」としか呼べないジャンルにおいてものすごい高レベルな仕事だという気がします。作曲者視点で言うと、この作品が狙いたかった世界観を理解した上で作曲されている、ということが物凄く伝わってきます。

そういった意味で、本作のプロデューサーであり脚本担当の加藤正人さんと、コンポーザーの光田康典さんの両者の作風が色濃く感じられる作品だと思います。

あと、前作クロノトリガーとの関係で言うと、古代編を担当した加藤さんがトリガーで描けなかったこと、やり残したことを、サテラビュー配信の「ラジカル・ドリーマーズ」を経て発展・継承したうえで、落とし前をつけるための作品だったのだろうと勝手に想像しています。これはネット上の知識に頼ったただの想像ですが。作品の外のドラマ性すらも感じてしまいます。

RPGに何を求めるか、で評価が二分する

スタッフが「10点では無く9点な作品」と語るように、前作のクロノトリガーに比べると明らかに万人受けする作品ではありません。賛否両論が発生する作品だと思います。
理由はいろいろとありそうな気がしますが、トリガーとクロスが関連付けられた物語になっているのにも関わらず、トリガーを肯定的に吸収していないというストーリー評価の観点だったり、戦闘や仲間システムがトリガーとかけ離れたものになっている(全くRPGの王道を狙っていない)というゲーム性の観点からだったりすると思われます。

まぁそれも分かるんですが、制作スタッフ自体も仰っている通り、これをクロノトリガーの続編として捉えてしまうとある種の裏切りとして感じられるところがありそうです。自分は続編と捉えるべきじゃないと思っています。クロノトリガー2ではなくクロノクロスというタイトルからも、制作者が考えていることの一端が伺い知れるのではないでしょうか。
いやまぁ、普通に考えたら「クロノトリガーの続編」を期待してしまうだろうし、むしろそっちの方が多数派な気もするので、悪い意味で裏切られた人の気持ちも否定できません、というかむしろ当然かと思います。それほど前作との共通項を見出すのは難しい作品です。

自分は良い意味で裏切られました。

クロノトリガーの方がRPGとしての完成度が高いのには賛成します。なのでクロスを他の方に「自信を持ってオススメ!」と言うのは少々難しいのですが、しかし、それでも自分はこの作品には迷わず10点をつけます。理由はストーリーと音楽ですね。これが、他の(多数ある)欠点を覆すレベルで良かったからです。

逆に、分かりやすくて大団円を迎えるストーリー、爽快なバトルシステム、快適なユーザビリティ、などを求めるユーザーにとっては、負担が大きい「なんかややこしい」RPGという評価になる気がします。

クロノトリガーとの関連性から立体化していくストーリー

事前にトリガーをプレイしておいて本当に良かったと思いました。まぁクロノトリガーをやらずにクロスだけやる人ってほとんどいないと思いますが。
クロノクロスは、前作で残された「未解決点の修復」を目的としたストーリーになっているからです。

クロノトリガーのエンディングで、仲間キャラがそれぞれ自分の時代に帰っていく中、魔王にだけ引っかかりを覚えたプレイヤーは少なくないと思います。ラヴォスを倒すことで他のキャラがそれぞれの目的を達成したのに対し、魔王だけは姉であるサラを探すという、あてのない、だからこそ先を想像させる終わり方になっています。そして、その後サラと魔王がどうなったかはトリガーでは一切語られません。

これが、古代編のシナリオを担当した加藤さんがクロノトリガーに残した「未解決点」です。

クロノクロスでは、RPG史上類を見ないほどパズル的に複雑構成化したストーリーを進める中で、トリガーで残された「未解決点」との関連性が徐々に浮かび上がってくるストーリーになっています。プレイを進めるにつれ物語がガシャガシャと立体的に組み上がっていくその様は、前作、特に魔王とサラのその後に想いを馳せた自分にとっては鳥肌ものの体験でした。

ヒロインであるキッドが前作サラの分身(?)だったり、本作における世界の危機がやはりラヴォスによるものだったり、それを止めるためにガッシュが立てた計画が本作のストーリーだったり、ルッカがわりと悲惨なことになってたり、前作の世界が実は悲劇的な結末を迎えてたりと、トリガーで一旦解決した世界がぶち壊しになっているのは、トリガーのハッピーエンドを享受したくてたまらない人にとっては辛いものがあると思いますが、自分は結構好きでした。暗いストーリーが好きなので。

全体としてストーリーがあまりに難解で。そしてそれは、クリアした後でも解説サイトなどを見ながら頭の中を再構築していく経験を提供してくれました。

ここで参考サイトを紹介しておきます。

音楽がとにかく至高

このゲームを語る上で、音楽は絶対に切り離せません。もうね、このサントラはゲーム音楽史上に残る超名盤と言い切っていいんじゃないかと。天地創造のサントラと合わせて墓まで持っていく勢いです。

何がいいかって、「クロノクロスという作品」のコンセプトがコンポーザーの光田さんにもしっかり共有されていて、世界観と不可分なところ。プロの仕事を見た気がします。「RPGの作曲家」というジャンルをはっきり感じさせるものです。
オープニング曲『時の傷痕』は特に有名ですが、それ以外でも前作のテーマ曲『クロノトリガー』のモチーフが随所に散りばめられています。ストーリーと同様で、前作との関連性を浮かび上がらせる素敵な演出ですわ。

オープニング曲『時の傷痕』

フィールド曲『時の草原』

まさか『クロノトリガー』のアレンジをフィールド曲で使うとは。最初に聴いた時はもう鳥肌が止まらなかったですよ。

制作者のエゴが世界観を作る

自分はこの作品から、プロデューサーである加藤正人さんのエゴをビンビンに感じます。もちろん良い意味で言っています。久しぶりに光田さんのプロキオンスタジオでのインタビューを読み返して改めて思いました。

加藤正人インタビュー(プロキオンスタジオHP内のページ)

勝手な想像ですが、トリガー製作時にフラストレーションを感じた加藤さんが、トリガーで貼った伏線を回収するために好き放題に創り上げた作品なんだろうと思います。そして、本当にそれが良かった。
ライブアライブにしろバハムートラグーンにしろ、旧スクウェアではこのテの作品は他に比べて商業的に成功したとは言えませんが、こういった隠れた傑作ほど製作者の意気込みが感じられて、自分にはズーンと胸に届きます。

外野なので昨今のゲーム業界のビジネス上の都合については全く知りませんが、プロデューサーが好き放題作るぜ、みたいなゲームはもうなかなか生まれないような環境になってしまったんだろうなぁというのは、肌で感じます。
まぁゲームは芸術活動では無いし、そもそも会社が潰れたら元も子もないので企業活動そのものに対してはモノを申す立場ではもちろんないのですが、いちユーザーの希望ということで書いておくと、作品性を重視したRPGが減っている気がするので、もっとプロデューサーを筆頭に現場スタッフの意志をバリバリ反映しました、みたいなRPGが増える、というか作れる環境ができるといいなぁと思います。

続編への期待

上述した通り、クロノクロスはトリガーのストーリー中で唯一の「未解決点」だったサラの物語です。そしてそれを受けた今作でもやはり「未解決点」が残っているのも、上で書いた通りです。

まだ残っている「未解決点」を別の世界追いかけるようなプロットで、次回作を期待してたりします。多分加藤さんってそういうストーリーが好きなんじゃないかなぁと思う。

続編という位置づけでなくて全然いいので、また加藤さん&光田さんのタッグでRPGを作ってもらえたらなぁ。