THE FIRST SLAM DUNK 感想。惜しさも残るが感動

1年以内

ネタバレあり。

一番好きな漫画はと聞かれて「ベタにスラムダンク」と答える人間ですが、映画公開から半年間見ていなかったので、ようやく見てきました。
ちなみにTVアニメ未経験勢です。高知県では放送してなかったので…。

総評

リョータに視点を据えるというコンセプトがとにかく最高。「確かにそれ見てみたい!」と思わせるのに十分。映画を使って「原作に深みを与える」アプローチに脱帽。ただ…もっと掘り下げたら完璧だったのに!という歯がゆさも残る。そんな感想です。

冒頭シーンに大興奮

  • 冒頭で「なんで沖縄?」と思ったものの、すぐリョータの幼少期である事が示され、次いで例の秘密基地が描かれる事で読み切り作品「ピアス」との関係を公式に認めた流れ、これで冒頭から心を鷲掴みに。
  • リョータが主役という事は(残念ながら)知ってしまっていたけども、てっきりこの映画はリョータ視点による山王戦のリメイクかなと思ってたら思った以上の変化球が来た。
  • 残りの2時間、どんな構成になるのか予想がつかず、かなりワクワクした。

映像が完璧

  • 映像はすごいの一言。絵のデフォルメと動きのリアリティのブレンド具合は100点。
  • とにかく「井上雄彦の絵がそのまま動いている!」というだけでも感動がひとしお。
  • 自分はアニメを見ない人間なので業界の事は分かりませんが、2023年の映像技術はここまで進化しているのですね…
  • 非常によく再現されたモーションのおかげで、深津のディフェンスの鬱陶しさが自分の想像以上だった事が分かった笑。
  • 他にも、早い早いと言われるリョータのドリブルのスピード感がどんなもんとか、ゴリが丸ゴリと接触して倒れるシーンの激しさなど、自分の想像とのギャップがあるシーンは結構あったんやなというのは発見。そのひとつひとつが正しく修正されていったのは映画ならではの体験でした。
  • 非常に細かいが、漫画では1コマ使って表現するシーンを体育館のヒキの絵で再現したのはおもしろい試みだと思った。印象的なのがゴリ復活後の雄叫びに花道が「おあー」と応えるシーン。本当にその場で観客としている感じがした。

山王戦の勝敗はおまけでも良かったかも

  • 総じて満足しているが、ここが惜しいと思った唯一のポイント。
  • この映画、「リョータの母子関係とインターハイへの挑戦を絡めて描く事」と、「山王戦を最新のCG技術で再現する事」の2つの軸があるように思われるが、前者をもっと徹底的にやってくれたら…とどうしても感じてしまった。
  • 試合の要所要所でリョータの過去がカットインする構成は原作に無いもので、非常に良いのだが。
  • ただ原作に従えば従うほど、そのシーンの直後に活躍するのが三井だったり流川だったり花道だったりするので、感情が行ったり来たりする感覚を覚えた。できれば終始リョータに感情移入し続けたかった。
  • あとこの映画の最大の感動ポイントは「井上雄彦の脳内にしかなかった物語が、25年経って明かされる」事にあると自分は思うので、試合最後の1分、花道と流川のハイタッチへの流れも、原作通りに再現するよりも「リョータの視点による」描写だったらもっと興奮できただろう、と想像してしまう。
  • ただもうこれは好みの話で、自分は「リョータだけが主役、他全員は脇役」という振り切り方でも良かったのではと思っているからそう感じるに違いない。というのも、自分は世の平均よりはリョータの事が好きだからだ。彼は原作で過小評価されるように描かれてしまっててかわいそうだ。
  • なので、最後の円陣をリョータが呼びかけた追加シーンはかなり胸に迫るものがあった。
  • 原作の再現としての映画を求める人にはこの形がベストなのだろう。会場に「ハイタッチ最高だったー」と言っている人はいたし。

ラストシーンは…

  • ついでにもう一点。リョータがアメリカ留学している様子が描かれるラストシーンはどうしたもんだろう。
  • インターハイ後にリョータが湘北のキャプテンを務める原作との整合がつかなくなる。いきなり「あれ、これパラレルワールドの話なん?」と邪念が入ってしまう。
  • 自分はこの映画を「あくまで史実は原作通り。視点を代えた物語」として解釈したいので、数週間の短期留学にでも行っているのだろうと考える事にした。
  • 5月29日追記。高3でキャプテンを務めた後に渡米したと考えれば辻褄があう。なんでこの可能性に最初に気付かなかったのか、自分の思慮の浅さを恥じる。
    現実世界にあるスラムダンク奨学金のような制度を利用して、プレップスクールに行っているのではという解説を見た。

その他

  • 途中まで魚住や海南メンバーが存在しないような扱いになってて「ああ、この映画はそう描くんやな」と割り切って見ていたのに、花道が倒れるシーンで観客席にいる描写がある。「だったらかつらむきのシーン入れたら」と思ってしまった。まぁ作中屈指の迷シーンなので作者の思い直しがあったのかもしれない。
  • 花道がルーズボールに突っ込むシーンで声出して笑う客がいた。相当謎だった。
  • アヤちゃんがかわいかった。山王戦前夜の追加エピソードは良かった。「困ったら手のひらを見よう」て、高校生の発想じゃない。

以上です。
ではこれから作者コメントや他の方の感想ブログを読んでいきます。