サムスミスって日本でどれくらい知名度あるのでしょうか。少なくとも俺にとっては
デビューアルバムでグラミー賞をとった驚異の新人
くらいの知識でした。
ただし同居人にとっては違ったようで、4年くらい前に単身でロンドンに留学していた頃はあらゆるところでサムスミスが流れまくっていたようで、思い出深いアーティストのようです。ということで来日と聞きテンション上がりすぎて速攻でGOLDチケットを買ってしまった同居人に着いて行く流れでさいたまスーパーアリーナに行ってきました。
そこで俺は、圧倒的なパフォーマンス力を目の当たりにして愕然とすることになります…
とりあえず撮る絵。周りの人はみんな光源に文句を言っていました。
俺みたいな”にわか”がGOLDパスを通ってしまうことに申し訳なさを感じます。
始まりました。いいのか悪いのか分からないのですが、周りの人がガンガン写真を撮りまくっていたので、俺も撮ってみました。
もちろんね、高い金払ってライブを見に行くわけですから俺も事前予習をしてたわけですよ。ところが俺はロックとジャズとゲーム音楽へのアンテナで脳が出来上がってしまっている人間であって、サムスミスを3曲くらいYouTubeで聞いたところで「歌うまいのは分かるけど、好みではないわ」くらいにさっさと結論をつけてしまってた訳です。
そんなもんでアリーナで彼の生歌を聞くと、
歌がうますぎるんすよ。
いやもう、笑えるくらい。というか愕然としすぎて実際に笑ってもうたし。
家のスピーカーで「歌がうまい」と事前予習してることがあっさり意味を無くすくらい、全く異次元の体験。マジで。「信じられない」とふいに思ってしまうことって人生でなかなか無いですが、この瞬間ばかりはそれでした。
後で知ったのですがレディーガガは彼を「パーフェクト」と評価したらしいです。
サムスミスがすごいたけに留まらず、彼が従えている「コーラス四天王」みたいな人たちも、もう非の打ち所が無い歌唱スキル。何なのこれ。みんな普段何食べてんの?
四天王のうちの一人、Lucyを相手に選び歌われたデュエット。俺はこのコンサート一番のハイライトだと思いました。音楽の神に取り憑かれたようなパフォーマンスには、魔力が宿っているようにも思える。
さすが世界で売れまくっているアーティストだけあって周りは外国人の比率が高く、客の反応が日本人よりも一律してテンションが高い。
「I love you, Sam!」と適宜絶叫する女性や、ライブ全てスマホで録画し続けている人(恐らくフィリピン人)、口に手を当ててずっと泣き出しそうな目でサムを見つめる女性、無我夢中で踊り狂うおばさん(これは日本人)など、個性的なメンバーに囲まれて、ファンでも無い俺はちょっと冷静に「何なんだこの体験は」と考えてしまいました。
まず思ったこととして、一応ですがジャズベーシストやってる私が長年気付いていながらも考えないようにしている、
声は最強の楽器である
という仮説の蓋がまた開いてしまいました。
世界的なジャズミュージシャンの演奏はそれなりに聞いてきましたが、その上でなお、仮にそれが世界一のジャズバンドであっても、今目の前で起こっている現象、ーアリーナを満席にするスケール感と、にわかですらすっかり感動させてしまうパフォーマンスー、は作り出せないのでは…どうしてもそういう考えが頭にぽかっと浮かんできます。
そんな考えに至る時、アート活動のポテンシャルとして評価すると、残念ながら楽器プレイヤーはボーカリストに白旗を上げざるを得ない気がしてくるのです。
サムスミスの呼びかけに応じ、スマホでアリーナを照らす人々。アリーナならでは醍醐味というか、俺はこの瞬間は結構好きです。
もう一つ思ったことは、
突出したパフォーマンスは普遍性を持つ
ということです。
それが絵画だろうと音楽だろうとダンスだろうと、パフォーマンスとしてのクオリティがあまりに高いと、何というか、言語や文化、もっと言うと好き嫌いを無視した人間の根源的な琴線に触れ始める、みたいな領域に行ってしまうんではなかろうかと。このライブにはそんな力がありました。
悪気は全く無いのですが、日本のアイドルと比較してしまいます。彼女らは日本で圧倒的な人気を得る一方で、その価値が海外から認められているかというと、そうとも言えない。これは何でだろうと考えると、アイドルというアート活動の価値がパフォーマンス性とは別の類のものだから、なのかも知れません。
こう考えると、単独で海外のアリーナを埋めるほどの存在感を持つような日本人アーティストの出現には、普遍性に到達するレベルでの圧倒的なスキルを持つことが必要になってくる気がします。どうも、教育にヒントがありそうだと思うのは俺だけでしょうか。
ということで、純粋に目をむきながら感動しながらも、冷静にうんうん考えた2時間でした。
多分俺がこの先サムスミスを自ら好んで聴くことは無いのですが、それでもなおこのコンサートは行って良かったと思える、なかなか無い体験をしました。
まだ26歳。どひゃー。
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