一応広告業界のすみっこで飯食ってる人間なので、たまには広告について書いてみます。
auのCMが話題らしいです。
» au「FULL CONTROL / Xmas」篇(Youtube)
ストーリーの構成で言うと
スマホでの操作がリアルへ影響を与えるシーン
→スマホでの操作がリアルへ影響を与えるシーン
→スマホでの操作がリアルへ影響を与えるシーン
→スマホでの操作がリアルへ影響を与えるシーン
→最後にミラーボールで全体共有
という構成になってるかと。
“全体共有”のメタファーとしてミラーボールを採用し、さらにその規模感を拡大するために気球で代用した、ところは柄にもなく「おおっ」と思いました。演出としては久しぶりに感動しました。
ただ、絵としてはもっと詰めれたんじゃないかなぁと思うところが細々とあって、ロケットニュースで紹介されていたほど「かっこいい」とは思わなかったです。ダフトパンクをあまり知らないから感情移入できなかったのかもしれません。
このCMのポイントは、かっこいいというところじゃなくて、スマートフォンの持つ可能性を「徹底的にポジティブに」メッセージ化することに成功している、というところだと思います。
※余談。CM中にO2O的なシーンがいくつもありますが、必ず影響を受けた側(ホテルにいるカップルやタクシーの運転手)の描写も入っているのが興味深いです。
スマホ操作という極めてパーソナルな行為がリアルへ影響およぼすことは、他の誰かと共有することとイコールである、ということに気付かされました。よく考えるとあたりまえですが、(自室や独房で無い限り)リアルは必ず他人がいる場である、というのはO2Oキャンペーン企画を考える際の視点となりそうです。
で、たかだかスマホを売りたいいち企業CMを60秒見ただけでこんなことを考えるあたりが「俺って天の邪鬼だなぁ」と思うのですが、このCMのメッセージは素直に受け止めづらいです。俺は。
あまりにポジティブすぎるメッセージを前にするとどうしても「その絵の先は、果たして幸せなのか?」とか考えてしまいます。これは梅田望夫さんのウェブ進化論を読んだ時の気持ちに似てる。
メリットの裏には必ずデメリットがあると思っている人間ですので、メッセージの裏に隠れているリスクを探しにいってしまうんですねぇ困ったことに。
テクノロジーの話も好きだし自分もスマホでの恩恵も享受している側の人間だしで、そこは否定する気は毛頭ないのです。でも今や、街も電車も手元を見ながら歩く人だらけになっちゃいましたよね、自分も含めてなんですが。
一言でいえば、壺を売りつけて来る人のように見えるということです。このCM。
あ、でも表現としてのCMとしてはすごく完成度が高いと思います。すげ。
まぁそんなことを言いだすとプロモーションという行為がそもそもどうなんだという話になって際限が無くなるのでひとまず考えるのを止めにします。
でもねぇ、やっぱり後半のこのシーンは思わず「怖っ」と思ってしまいました。
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