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ドリンクが出るタクシーに乗った。

special_taxi

わりと残業帰りにタクシーを使う方だ。
タクシーに乗ってる間にやることと言えば、まぁスマホいじるくらいだ。
というのも、あくまで個人的な経験で言うが、タクシーの運ちゃんと喋っておもしろかった試しが無い。

今日の運ちゃんはひとあじ違った。

乗ってすぐ「煙草吸いますか?」と来た。

「えっ、吸っていいんすか?」
「いいですよー。ドアに灰皿あるでしょ。どうぞ」
「匂いついちゃうからいいっすよ」
「いや自分も普段吸ってるから大丈夫大丈夫」
「へー。そのわりに匂い全然しないですね」
「吸う時は窓あけてるからねー」

とはいえ、乗る直前に1本吸ったところだったから、まぁいいやと思って断っておいた。
内心、へーこういうタクシーもあるんだなぁと思った。

したら、次に「ドリンクあるけど、飲む?」と来る。

なにィ。

「えっ、ドリンクなんて用意してるんですか」
「そうなのよ。1本とっていいよ」
「はぁ…。じゃあ疲れてるんでリポビタンD頂きます」
「終わったらビン頂戴ね」

聞けば、ここ10年くらい、ウチと同じビルに入ってる某出版社にずっと付けてるらしい。で、喜んでもらおうとドリンクを出すようになったのだと。

社員と仲良くなって一緒に飲みにいったり、果ては結婚式に呼ばれたこともあるらしい。
最近その出版社が移転するにあたって、葉書をもらったのでそれ以来こっちのビルに来るようになったのだと。他のタクシーと並んでても、顔を探して乗りに来てくれるらしい。仲がいい人は電話で呼んでくれるとも言ってた。

何者なんだこのおっさん。

そういう付き合いで仕入れたのだろう。出版の業界話をちょくちょく聞かせてくれる。その話がけっこうおもろい。

で、それにつられてつい俺もこっちの業界とか会社の話をしてしまう。喋りながら、「あ、こうやって話のネタを集めてるのかぁ」と気付いた。誰かから話を引き出すには、そういう話をしたくなるような話題を自分から振ればいいんだと勝手に感心した。

もしかしたらこの会話はまた他のお客さんとの話のネタになるのかもしれない。そんだけの価値のある話をしたかは知らんけど。

気付いたら家。一切スマホは開かなかった。

「また今からあのビルに戻るんですか」
「うん。電話くれるからね」

降り際に、つい名刺をもらってしまった。

これがサービスかぁ。と思った。
もうちょっと言うと、サービスと営業活動が一周した場に居合わせたんだと思った。

また別の夜、あの運転手さんがいたら、俺は多分乗ると思う。