数年ぶりにウッドベースでライブする事になったので、放置していた楽器を調整に出すことにしました。記録に残っているところだと、前回調整に出したのは2010年6月で、実に16年ぶりになります。
その時の記事↓
その間に私も引っ越しをしまして、今の家から30分の距離という近さで気になっていた「杉田コントラバス工房」さんにお持ちしました。7月の中旬ですが、30分の移動なのにお店に着く頃には汗が吹き出るように出て、夏の始まりを感じました。
目次
いざお店へ

約束時間の10分以上も前に着いたのでお店の前で待ってたら、中から杉田さんご本人が現れ「暑いでしょうしお入りください」とお招き頂きました。お優しい。
普段立ち入る機会のないコントラバス工房の空気に圧倒されながら、自分の楽器を見てもらいます。初対面というだけでカチコチになっている上に、自分の楽器を見てもらう時間というのは、なんだか日記を他人に見られているようでドキドキします。日記書いてないけど。
診断結果
なにせ15年間何もしていない楽器。プロが見たら笑いが止まらないようなひどい状態なんだろうと思い込んでいたのですが、
- 表板の剥がれはなさそう
- 駒も反っていない
- (私が気にしているほど)劣悪なコンディションではないよ
頂いた総評としては上記の通りで、安心しました。
調整内容
私から相談差し上げたのが、G線の弦鳴り感です。「ガイーン」と弦だけが無理やり鳴っていて、胴に響いていない感じを改善したい。これについては
- 魂柱の位置がボディの中央に寄りすぎている
- ダダリオは弦が細く弦鳴り感が強いかもしれない
などアドバイスを頂き、弦の交換(持ち込み)と魂柱の位置を調整して様子をみることに。あと私からテールガットの位置調整をお願いしたのと、指板の反りを調整しましょうという会話をしまして、「1週間後に取りに来てね」という事で初回訪問は終了。
オールド楽器
せっかくの機会なので海外のオールド楽器を少し弾かせてもらいました。お客さんの7割はオーケストラとのことでジャズ向けセッティングでは無い楽器が多いようでしたが、どの楽器もG線が明らかに私の楽器よりもしっかり鳴っていて、いつか欲しいなぁと思ってしまいました。
調整1. テールガットのワイヤーをケブラー紐に変更
という事で1週間経ち、楽器を受け取りに工房に伺いました。
まずはテールガット。これは私からリクエストしたものです。もともとはただのワイヤーだったのを、よく使われるらしい「ケブラー」という素材に変更してもらいました。音への影響は多少はあるという噂もありますが、大きな変化は期待しておらず、単に「なんか気になるから変えたい」くらいの意図です。

で、変更後の実物を見ると期待以上にかっこいい。満足度が高いです。まぁ誰もこんなところ見ていないと思いますが。
調整2. テールガットの高さを下げる
この楽器を新品で買って3年目くらいの頃、「弦のテンションの強さ」と「音の固さ」にかなり悩んでいて、なんとかしたいと藁にすがる思いでテールガットを高くしてもらった事があります。

エレキベースの経験から、「弦の全長を短くすれば弦を弾きやすくなるのではないか」と思っての処置でしたが、今思えば学生の浅知恵で、お願いした京都の職人さんからも「うーん?」みたいな反応を頂いた記憶があります。
この楽器も20歳を超えさすがに音も落ち着いている事から、一般的な位置・長さにしてもらう事にしました。具体的には、駒からテールガットまでの弦長を16cmにしてもらいました。
調整3. 魂柱の位置を外側に移動
また当時、魂柱をボディ中央に寄せるよう調整もしていました。意図は同じく「中央に寄せたらふくよかな音になるかもしれない」という考えで依頼したものです。それから15年以上経つ間にその事をすっかり忘れていたのですが、杉田さんによると「一般的な魂柱の位置とは言えないかも」という事でしたので、これもスタンダードな位置に戻すようお願いしました。

調整4. 指板を削った
これは杉田さんからの提案でしたが、結果的にこの調整が今回の最大の変化をもたらしました。
指板が順反りだったのは自分でも認知していたのですが、それにしても反りが激しいとのことで、削ると弾きやすくなるよという助言を頂き、ではお願いしますと。
実際施術すると、大げさに言えばこのようにうねっていたようです。

ローポジション側が順反りなのはよくある話として、加えてハイポジション側がむしろ膨らんでいたようで、これを均すよう削って頂きました。
調整後の楽器をお店で弾いてその変化にびっくり。明確に体感できるレベルで弾きやすくなっている!
ローポジションの押弦が楽になったのは言うまでもなく、G線のハイポジションにあった不自然な弦高の低さ(ほぼ指板ぺたぺた)が解消されて、ローからハイポジションまでの押弦感が自然に繋がった感覚です。
コントラバスの調整には駒やテールガット、エンドピンの変更など様々あって、ひとつひとつの変化を明確に認識できない事は多いのですが、指板の調整はむちゃくちゃ分かりやすい変化です。
この施術、結果的に今回の調整費の半分以上が充てられたわけですが、本当にやってよかったと思いました。

結果、弦高は以下のセッティングとなっています。
- G線の指板先端: 4mm
- E線の指板戦隊: 8mm
なおこの楽器の指板素材は黒檀の中でも「縞黒檀」という柔らかめの素材で、反りはどうしても起きやすいとのこと。ゆうても30万円クラスの楽器なので、素材に難があるのはしょうがない範囲だと思います。ここに拘るなら楽器を変える話です。
弦交換もお願いしました
ダダリオ・ヘリコアのソロチューニングの弦にしてから10年間そのままだったのですが、今回、ふるさと納税でゲットしていた鈴木バイオリンのコントラバス弦に交換して頂きました。
これについては別の記事を書きます→書きました。
総評、調整してよかった
調整費用は税込4万円弱でした。安くない出費ではありますが、ウッドベース弾きとしては宿命みたいなものです。それでも指板の削りは思った以上の大きな変化で、今まで「楽器と戦っている」感覚だったのが、「演奏に没頭できる」感覚に変化したのはおねだん以上の価値があったと感じます。
弾きやすさだけでなくサウンドにも大きな変化がありました。
- 音量:大きくなりました。弦交換と魂柱位置の調整が作用していると思われます。
- G線の「ガイーン感」:解消しました。弦交換、魂柱、指板の全てが作用していると思われます。
- 特にA線が「ずーん」と深く鳴るようになりました。これは魂柱でしょうか。予想外の効果です。
楽器の調整という予定外の出費を気にするとなかなか手が出ないものですが、「楽器を弾くのが楽しくなる」事に対する投資は人生を豊かにするなと改めて思いました。
これでスタジオに入るのが楽しみでしょうがありません。


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