ブランキーのドキュメンタリーVanishing Point観てきた

当然のようにVanishing Pointを観てきました。

We Are Happyのような、オフショット万歳で彼らのキャラクターが分かるような映像集かと思っていたけども、全く検討外れ。「破壊への旅」といういささか仰々しいキャッチコピーがついとったけれども、本当に3人が解散前にどう音楽(というかライブ)に対峙していたか、その様子を描き出すことだけに注力された映像作品でした。

なので彼らのおもしろハプニングとかシーンは全く無し。ライブ映像と、ライブ後の楽屋での3人のやりとり、でほぼ全てが構成されています。

ファンとして、未公開のライブ映像がわんさか出てくるのがもう単純に嬉しかった。
ただ同時に、「このどれにも自分は参加できなかった」という過去を再認識したのも事実で、少し複雑だったりもする。

あとは楽屋のショット。
雑誌をはじめあらゆるメディアでブランキーを追い続けてきたこともあって、彼らが自分たちの音楽をどう捉えているのかとか、ライブで求めるクオリティがいかに高いかは当然知ってました。けども、楽屋で真剣に話し合う場面を映像として初めて観ると、そのリアリティが格段に増したように思います。映像というメディアの力強さはやっぱり凄いなぁと、場違いな感想を抱いたりしました。

とにかく、彼らの音楽に対するストイックな姿勢が浮き彫りになっている。

映像を観ながら、大学の頃やってたジャズのフルバンで結構悩んでた時期がぼーっと脳裏に浮かんだ。
練習しながら、わりと似たような会話をしてたものです。ベーシストとして自分のポジションを模索していた時に考えていたことは、劇中の照ちゃんが代弁していたように思えた。
高校生の頃にブランキーが終わり、大学に入ってジャズを始めた。周りはだいたい高校生からジャズやってたか吹奏楽をやってたという人ばかりで、「俺ってひょっとしておかしいのかな」と思ってた。別に俺としては全く自然な流れだったんだけども。

でもこの作品を見て間違ってなかったなぁと確信した。
自分をブランキーと同じ地平に位置づけるつもりはないけど、噛み合わないテンションにイライラし、ストイックに音楽の形を求める彼らの音楽で10代後半を埋め、純粋培養された自分の音楽観は、ジャズというフォーマットとぴったりだったんだと思う。俺の場合まわりにそうでもない人もいて、浮いとったけど。

3人のスタンスの微妙な違いは気になった。
あくまで3人で出す音にこだわり続け、噛み合わない歯車を是が非でも合わせたい照ちゃん。3人というより自分のドラムスタイルを模索する達也、なるようになるという考えのベンジー。
ブランキーに最も「バンド」を求めるのが照ちゃんだったのかなと。そういう意味でこの作品の主役は照ちゃんだったのかもと思う。

ドキュメンタリーとして、ちょっと思うことが2点。
ひとつは、恣意的にストーリーっぽくした感があったところ。たまに入る翁長さんのキャプションが余計に感じることがあった。名古屋あたりでのスランプの下りは、ツアーを見続けた人にはリアリティがあるかもしれないけど、そうでない人にとってはちょっと説明的に見えてしまった。世に出てるライブ映像は全て見たと思うけど、映像として残ってるものはキレキレのライブばっかりだったんだなぁと。

そしてもうひとつは、やっぱり、フジロックまでを収めて欲しかった。個人的にはLast Danceよりもフジロックの方が遥かに鬼気迫る演奏で、彼らが最後に到達した場所、というの印象が強いです。この作品のコンセプトとも合っているんでないかと。単純にフジロックのBaby Babyを観たかったというのもあるけど。

でも、映画館で見れてよかった。
良く考えたらブランキー好きを15年くらいやってきて、彼らの音楽を爆音で聴く機会が無かったなぁと。自宅のコンポから出る音でしか体験したことが無かった。耳鳴りがするような音量で聴くブランキーは一味違って、鬼気迫る緊張感がそのまま伝わってくるようだった。

見終わって痛感したのは、俺が知らないブランキーという世界がまだまだある、ということ。当然なんだけども。
その事実が半分寂しくもあり、知れて嬉しかったというのが半分ある。そんな作品でした。